美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H569

衝撃的な場面に出くわしてしまったけど、私はそれなりに有意義だった思ってる。別におじさんの変な趣味をみたことが……ではない。どうやらちゃんとここの人達も機能性よりも『カワイイ』とかを求めてる気持ちがあるってわかったことが……だ。

 それが有意義って事ね。なにせこの町の人達は皆同じような格好をしてる。黒いピチッとしたスーツに身を包んでる。ものすごく高性能で、どうやら耐衝撃・耐斬撃・運動性能向上・運動補助・危機回避・人工蘇生――と様々な機能があのスーツにはあるらしい。

 なるほど、確かにそれだけの機能があるのなら皆それを着そうではある。でもこの町、そんな危険な感じは無いけどね!! 

「この町ってそのスーツを着なきゃいけない決まりでもあるんですか?」

「そう言うのは別に無いですが、基本的に支給される服がこれですからね。それにどこでもこれなら止められることもありません。とがめられることも無いですし」

 一種の制服と化してるって事なんだろうね。確かに毎日何を着ていくか……それを悩まなくて良いのはある意味で楽ではある。それにオシャレには格差が生まれるが、皆が同じ服を着てたらそこに格差は無い。あくまで服では……だけどね。

 オシャレとは足りない部分を補うような役割もあると思う。だって皆が同じ服を着てたら、元の顔面の格差がね……仮に私がこのスーツを着たら、この町の人達にきっと敗北感を味あわせてしまうと思う。

 そしたら私と同じ格好なんて出来ない! って言う人もあらわれるかも……無いとは言えないよね。私が元いた世界では皆こぞって私の真似をしてた。それならここでもそうなるのでは? と思うかもしれないが、元の世界の皆さんは自分流のアレンジもしてた。そこが自分に合うようにするって言う工夫なんだよね。

 だって私と全く同じ顔の人はいないんだし、それは当たり前のことだ。けどハッキリ言って、この高性能なスーツに一番足りないのはそこだよね。

「せめて改造できればね」

「改造ですか? ラーゼ様は一体どんな機能をこのスーツにお求めなのでしょうか? 参考までにご教授を伺いたいですね」

 凄くわくわくした様子で彼は聞いてくるが……ゴメンだけど改造ってそういう事じゃ無い。既に飽和してそうなそのスーツにこれ以上何を入れたら良いのかなんて私にもわかんないよ。そうじゃなくて――

「違います。私が言ってる改造はそれぞれに個性を持たせられる余地があったら良いなって事ですよ」

 なんか半袖に出来るとか、女の子ならお腹見せられるとか、短パンタイプとかさ……せめて皆黒なのはどうかと思うから、色を変える機能は欲しい。それは彼のいう改造かもしれないね。

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