美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H520

聖女ちゃんが集めた聖騎士達にその考えを語った。そしてそれには当然、聖騎士達は渋面になる。なにせ彼らは聖女ちゃんを……世界の頂点にでも立たせたかったのかもしれない。自分達が信じるこの素晴らしい女性こそが、世界に君臨すべき……と全員が思ってるわけではないかもしれないけど、思ってる奴だっているだろう。

 だからこそ……

「そんなこと……認められません。それでは貴方の功績が……」

 そんな事を言う聖騎士の一人に、聖女ちゃんは優しくこう言うよ。

「そんな事はどうでも良い事じゃないですか? 大切なのは、この世界が平和になる事です。その為に私の存在がいらないのであれば……それでもいいのです」

 聖女ちゃんの声は優しいが、でもその声には決意も乗ってるように思える。それはそうだよね。なにせ自分の功績を自分じゃない奴にゆずるってはらわた煮えくり返るよね。いや、聖女ちゃんはそんな子じゃないけどさ。だからこそ、こんな決断が出来る……とも言える。

「ですが聖女様!!」

 反論しようとしてる聖騎士に聖女ちゃんは「めっ」と優しく言う。そんなのしたら惚れ直しちゃうよ。実際聖騎士は続きの言葉が紡げないでいる。あれは落ちたね。いや聖騎士何て奴等は既に聖女ちゃんに落ちてる奴等の集まりだけど……今のでさらに落ちたよ。聖女ちゃんも小悪魔だね。聖女だけど。

「大切なのは世界の平和と安定です」

 聖女ちゃんのその言葉はわかる。今のとても厳しい時代において、それは何よりも大切な事だろう。けどね。神視点で言わせて貰えば、平和と安定、そして激動と動乱の時代ってのはどっちもずっと続いて貰っては困るんだよね。平和と安定は人々の繁栄をもたらしてくれる。そして激動と動乱は、色々な技術とかが生み出されてる。

 そう言うのが良い感じで交互に来る事によって、世界とは大きく成長していくのだ。なので神は平和を願ってるわけではない。ただちょっとこの激動の時代が長くなりすぎたら折角の文明が後退してしまうかもしれない……という思いから介入してくるのだ。と言う事が今の立場でわかった。ようは神なんて結局は人々のような下々なんてのは実質的にはどうでも良いのだ。大切なのは世界の発展であって、その為なら、戦争が起きたって良い。

 聖騎士達は聖女ちゃんに言いくるめられて……というか、聖女ちゃんに反対なんて出来ない。なにせ全員惚れた弱みって奴があるから。そして意見をまとめた聖女ちゃんは再びベルちゃんと対峙する。というか、話してる所に盛大にベルちゃんが割り込んできた。

「どう? 死ぬ覚悟は出来たしら?」

「いいえ、私は死にません。でも、聖女として死ぬ覚悟はしました」

「どういうことかしら?」

「全てを貴方に託そうと思ったんです」

 そう聖女ちゃんは言い切った。

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