美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H499

「一緒に帰りましょう。私が女王様が立派にその力を御してると説明します。貴女のおかげで、沼を消滅できたと説明すれば、きっと大丈夫です!」
「分かってないわね」

 そう言って聖女ちゃんの言葉を一蹴するベルちゃん。うんうん、分かってないね。私には次にベルちゃんが何を言おうとしてるのか分かるよ。

「分かります。正当に評価されないのは悲しいです。女王様は誰よりも頑張ったんですよね。だからそれを分かってもらえるように努力しましょう。大丈夫です! 皆さんちゃんと分かってくれます!」
「ふふ、なんで私が民に頭を下げるような事をしないといけないの? もっと手っ取り早い方法があるじゃない」
「それは……一体……」
「簡単――」

 ベルちゃんは扇情的に自分の体を抱きながら、頬を赤くして言うよ。

「――私だけがなんとか帰ったとなれば、皆が私を賞賛するしかないじゃない。それにもう私にとってはモンスターは脅威じゃない。だから、貴女なんていなくても平和をもたらすことが出来るのよ。賞賛を受ける者は二人も入らない。
 私だけにその賞賛は相応しいと思わない?」

 そういうベルちゃんは再び手を向ける。黒い光を宿したその手を。そしてその言葉を受けて、周囲の聖騎士達も警戒する。いや、警戒だけはしてたね。ただ聖女ちゃんが説得しようとしてたから、剣は抜いてなかっただけだ。
 そして今は密かに連れてきてた軍を展開してたらしい。沼を囲むように……としようとしてた様だけど、流石に世界最大の沼だからね。はっきり言って対岸は見えてない。そのくらいには広いのだ。だから展開は見える範囲で扇状になってるくらいだね。
 まあ騎士とか言いつつ、魔法主体だし、問題はないだろう。

 けど警戒する軍の人達と違って、聖女ちゃんはあくまでも聖女ちゃんだ。両手を組んで祈るようなポーズで言うよ。

「幸せは皆で分け合った方が何倍にもなります。女王様もその国の民が幸せであったら、きっと幸せではないんですか? 国が豊かだからこそ、女王様も楽しく暮らせると思います」
「確かに私はチヤホヤされるのも好きよ。だからこそ、民は皆犬で良い。下僕で良いの。私が一番幸せで、その下に零れた幸せくらいなら分けてあげる」
「一人での幸せはとても儚いものです」
「それでも、他の誰かが私よりも幸せなんてイヤなのよ」

 うん、やっぱり二人の話は平行線である。分かってたけどね。どうあってもわかり合えない二人、ベルちゃんはもう無駄だと思ったのか、再び攻撃をする。それを聖女ちゃんは防ぐけど、流石にもう周りが黙ってない。軍や聖騎士たちが攻撃を開始した。

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