美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H496

「貴方は……一体」

 ベルちゃんと聖女ちゃんが開行した。沼の中心にいるベルちゃんとその対岸にいる聖女ちゃん。そして聖女ちゃんの周りには輝く鎧に身を包んだ聖騎士達。更にその後ろに各国の合同軍がいる。

「あらあらお久しぶですね聖女様。そんなにも手駒を沢山引き連れて、本当に愛されてるのね」
「その声……もしかしてベルベファーゼの女王様?」

 そう呟いた聖女ちゃんに、周囲の者達が驚く。なにせ見た目変わってるからね。ベルちゃん今や人だった頃の見た目ではない。人の見た目はしてるけど、以前の姿を知ってたら驚くのも無理はない。だからこそそう呟いた聖女ちゃんにまさか……という者達がいる。でもそこでベルちゃんがそれを肯定するよ。

「よく分かりました。さすがは聖女。貴方にはきっと、他の人に見えない物が見えてるのでしょう。だって、神様に認められた聖女様ですものね」

 ベルちゃんは優しそうな笑みを浮かべる。それに周囲の者達は思わずドキリと……いや、この場合はトゥンクという擬音の方が合ってるかもしれない。鎧を着込んでる奴等は分からないが、それでもみなさん顔を赤らめて皆一応にその胸を押さえてる。
 
(今、堕ちたよね?)

 はっきり言って今のベルちゃんは可愛い。綺麗で可愛いのだ。しかも状況が状況なんだよね。周囲は決して整ってない。可愛いや綺麗を見せる為の場所としては相応しくないのだ。ここだと聖女ちゃんの魅力度はフィールド効果で少し-補正が入るくらいだ。純粋に聖女の力的にはこの場所には特攻的な力を発揮できるけど、聖女ちゃんの魅力を百パーセント表す場所じゃないじゃん? だから-補正が入るのだ。
 けどベルちゃんはそうじゃない。寧ろ何故かこんな場所なのにプラス補正が入ってるかのように男共にはみえてしまってるみたい。その証拠に誰かが……

「美しい……」

 と呟いた。そしてフラフラと隊列を乱して、沼に誘われるように入ろうとする。そこにまだ正気を保ってる奴等が止めるというそんなことが起きた。

「皆さん、気をしっかり持って!」

 そう言って聖女ちゃんが体から光を出した。その神々しさに意識を取り戻す者も出てくる。けど、それでもそれぞれの美女の魅力に皆さん釘付けである。

「何をしたのですか?」
「私は何もしてないわよ。ただそうね……これは嬉しいことだわ。だって、今の私、貴方と並ぶほどに魅力的って事でしょう?」
「そんなことが今大切ですか? ここは危険です女王様。姿が変わってるのは気になりますが、ご無事で何よりです。帰りましょう。私たちは貴方を救出に来たんです」

 そう言って聖女ちゃんがその手を差し出した。聖女ちゃんは不思議とこの森を行軍してきた割にはその衣服に汚れはない。別に彼女が神輿に乗って担がれて楽してたから……とかではない。そういう子じゃないからね。
 ちゃんと彼女はこのモンスター大陸を何日も皆と共に歩いてここまでやってきた。でもそこに汚れがないのは、聖女ちゃんの服が特殊な物で、そして清潔さを保つ魔法を彼女が使えるからだ。聖女ちゃんは確かにここでは-補正が入るだろう。けど……それでも彼女は溢れんばかりに輝いてる。そしてその光を吸い込む闇を、ベルちゃんはまとってた。
 二人はまさに対局だね。面白い。

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