美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H495

 女王様ことベルちゃんは自分の容姿を気に入って、そして自分のその力も気に入ったようだ。この不気味で暗い場所に咲く一輪の花のように彼女は漆黒に輝いてる。漆黒に輝くっておかしいけど、なんかそうなんだよね。彼女は決して眩しい輝きを放ってるわけじゃない。寧ろ彼女からは常に靄のような物が出てて、それが暗く黒く、モンスター大陸に差し込んでる僅かな光さえも飲み込んでるように見えて、彼女の輪郭だけを浮かび上がらせてるような? そんな見え方してる。
 だから暗い中でも彼女の姿だけはやけにはっきりと見えると言うね……面白い使い方をするね。私もまねをしようかな? いや必要ないか。だって私……既に輝いてるし!! わざわざ周囲を暗くする必要なんてないんだよね。私から輝きが漏れ出してるからね。

 そんなことを思ってると、色々とやってたベルちゃんが何か笑いだした。綺麗な女性が黒い沼の上で高笑いをしてる図って何か怖いね。そんな感想を抱く。まあけど歓喜に打ち震えるのも分かるけどね。なにせ彼女は別に魔法が他者に比べて秀でたわけじゃないし……マナを蓄えておける器だってそんなに大きくはなかった。けど……はっきり言って今や彼女の魔力量は今の人類の誰よりも高い。聖女ちゃんも超えちゃってるね。
 それだけとんでもない力を得てしまったのだ。しかもだよ……複雑な魔法とかなら、色々と知識というか、そういうのも必要になって……来る? 案外私はインスピレーションを大事にしてるから、感覚で使えるようにはしてる。私は煩わしいのは嫌いだからね。
 でも超自然的に使える魔法に色々と人は付け足したくなるみたいだ。今やあの世界では魔法を使う為のルールというか、色々な大系とかできてるし。私が適当に使えるようにした魔法という仕組みを賢い奴等は解き明かしたい――的な欲求があるらしい。深い意味なんて無いのにね。
 ただ私は折角だから魔法が使えない世界よりも使える世界が作りたいよね――っていう安易な考えでしかこの星を作ってないからね! それなのに人は神の考えを深掘りするのが好きなようだよ。まあ否定することでもないから勝手にやらせてたわけだけど……その人々がまだ浅い歴史の中で作り上げたそういう魔法の仕組みの中ではベルちゃんは決して優秀な魔法使いではなかった。

 けど飛び抜けて綺麗だったから、彼女は女王まで上り詰めたんだ。けど今や彼女は人としての全てを失ったかもしれないが、代わりに人類を遙かに凌駕する力を手に入れたみたいだ。それは喚起しても仕方ないと思う。

「凄いわ……これだけの力があれば、私は老いない。そして死なないのでは? 心の臓の音もしないわ。そもそも生きてるのかしら私?」

 そんなことを彼女は呟いてる。確かに彼女はその存在自体を変えてるね。既に人ではない。でも見た目は人だ。彼女は美を求めてたからね。あの黒い人は彼女の思いを反映させて人の形を保ったのかもしれない。

「これだけ美しくなって帰還したら……ふふ……私があの女よりも凄いって皆が言うでしょうね」

 そんなことを言ってるベルちゃんはどうやら国に帰るつもりらしい。自分の姿がかなり変わってる自覚あるのかな? 可愛く、美しくなってるから問題ないと想ってるみたい。そこに近づく集団が私には見える。勿論、聖女ちゃん達だ。はてさて、どうなるのかな? 

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