美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H460

「何を言ってるんだお前は?」

 ゼンマイの奴がそんなことを私に言ってきた。どうやらゼンマイにはあの黒いドラコンのなり損ないの言葉は聞こえていないらしい。やっぱり私は力を混ぜたから聞こえるのかな? まあけど、私の力って殆どアクトパラスとゼンマイの力だと思うんだが……よくわからない。
 だって私の元の力がアクトパラスとゼンマイの力なら、この黒いドラコンのなり損ないの声が聞こえたっておかしくないような気がするじゃん。でもそうじゃない。まあいっか。

「家族の話し合い?」
「うん?」

 更に訳分からん……的な感じになってるゼンマイ。だってゼンマイには聞こえてないんだから仕方ない。まあ察して欲しい。つまりはこのドラコンのなり損ないが生きるか死ぬか……それを私に嘆願してるのだ。私が気に入った言葉を言えたなら、ゼンマイから解放させてあげるのだ。まあけど、それが出来たとして、このドラコンのなり損ないをどうするかという悩みが出てくるね。
 下手に別の銀河に送り込んでも、そこでまた銀河を食い尽くして貰っても困るし……まあ今はこいつが何をいうか。私のご機嫌を取れるか――だ。

『ママは魂が、美味しそう。光り輝いてる……』

 ふむ……まさか魂なんて曖昧な事を言われるとは……これはどう反応して良いのか困る。私は自分自身のことを美少女だとは確信してる。でも、性格が良いかと言われると、そこは確信できない。だって私は別に自分のためには他人を利用したって良いと思ってる。
 勿論それは美少女の自分が一番価値があるから――というまっとうな理由がある。もしも……だよ? もしも私よりも上の美少女が現れたら、そっちを優先してしまうかもしれないほどには私にとってと美少女度というのは絶対の指標なのだ。
 私にとっては世界とは可愛いか、可愛くないか――それだけ。さて、問題はそんな私の魂は綺麗なのか……まあ美少女の魂までもが綺麗なのは理想だよね。中も外も綺麗とかもう最強じゃん。まさに私に相応しいといえる。

「魂ってどういう風に見えるわけ?」
『内側から……あふれ出してる感じ……でも普通は中に、収まってるよ。外には出ない。でもママのは出てる。あふれるように出てる。きっととても大きな輝きなんだ』

 ふむ……そこまで言われると良い気分になってきた。でも今の口ぶりからすると、ゼンマイの魂とやらは器から出るほどではないと言うこと? どういうことなんだろうか? 絶対に力としてはゼンマイの方が強い。でも魂では私の方が大きいのだろうか? それともそのあふれ出してるのって実はこの体に限界が近づいてるから? とかないよね? ちょっと不安になってきた。まあとりあえずはドラコンのなり損ないを解放してあげよう。

「ゼンマイ、放してあげて」

 私はちゃんと約束は守る女だよ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品