美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H435

「ゼル!」

 私はやる気満々のゼルに「やめて」と言う思いを込めて叫んだ。けど、止まる気は無いようだ。ゼルにもプライドってやつがあるんだろう。まあドラゴンだもんね。ありそうだよね。
 そしてそれに対するのはアクトパラスだ。二人がかりでやる必要はないらしい。圧倒的にゼルの方が圧迫感を放ってる。ビリビリと肌に刺さるようなプレッシャー。
 その口に黒い炎が揺らめいた。そしてそれを吐き出す。一気にこの白い空間が黒い炎で包まれる。

(ゼル、私も居るんだけど!?)

 そう思ったけど、私の周囲は何やら見えない壁があるらしい。アクトパラスが私を守る結界でも張っていってくれたのかもしれない。感謝はしない。だって別にこれって私の為って訳じゃなく、奴ら自身のためだもんね。

 ゼルの黒い炎がこの空間を燃やしてるのか、なんか所々から宇宙が覗いてる。やっぱりこの白い空間は、アクトパラスとゼンマイの固有結界みたいな空間なのかな? 

「さすがはドラゴン、すさまじい攻撃だ」

 そう言いながらも、アクトパラスの奴には全くダメージはないように見える。奴は背中からも自身のタコの足をニュルルルと出しながら、ゼルへと迫る。そして腕を向けると、ただの人のような手だったのに、タコの足に変わって、それもゼルへと迫った。けどゼルは一羽ばたきして、アクトパラスを吹き飛ばす。そして今度はアクトパラスだけに向かって炎を吐いた。

(よし……)

 私は死にかけてるけど、頑張ってゼルを応援してる。なにせここでゼルがこの二人を倒してくれたら、大逆転勝利だ。それを願わずには居られない。そう思ってたけど、一瞬何かがゼルの翼を横切ったと思ったら、ゼルの片翼がその巨体から切り離された。

(一体何が?)

 わからない。私には見えなかったよ。でもそもそもドラゴンって翼で飛んでるわけじゃないって言われてたよね。ゼルは少しバランス崩しただけで立て直す。
 けどそこにデカいタコの足が迫ってた。どっから湧いてきたのか……でもそれをゼルはその牙で食いちぎる。そしてその全身に黒いオーラをまとった。アクトパラスへとアタックに行く。たしかにゼルは強大な体をしてるし、その体でぶつかったらアクトパラスだってただで居られないだろう。
 そう思ったけど、背中から出した足で簡単にアクトパラスはゼルの突進を受け止めてはじき返す。そしてそこからはかなり一方的になってきた。ゼルはアクトパラスの足で殴られ続ける。反撃しようとするけど、ほぼゼルの攻撃がアクトパラスには通じてない。

「わかったであろうゼルラグドール。貴様では俺には勝てない」
『ふん、だが私は誰かに従うなんて事はしないぞ」
「そうだな。お前の意思を変えるなんて面倒だ。ゼンマイ!」

 アクトパラスは自身の足で拘束したゼルをゼンマイへと向ける。するとゼンマイが一つのゼンマイをゼルの額に打ち込んだ。それはゼルの頭に埋まっていく。そして――

『う゛ぐ……がああああああああああああああああああ!』

 そんな声と共に、ゼルの口から色々と出てきて、その頭部が機械で覆われた。

「ゼル……」
「無駄だ。もう、奴の意思はなくなった。お前も、ああなるか?」

 そう言われた瞬間、背筋がゾクッとした。私は泣きながら頭を横に振った。

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