美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H433

「ゼル……なっさけない姿してるね」
『貴様も大概だぞ』

 確かに……私たち似たもの同士か。ゼルはガチガチに縛られてる。機械のような物と、タコの足……その両方でガッチガチにね。それだけゼルを警戒してるって事なんだろう。

「どういうつもり?」
「なに、睨むことはない。何も消滅させようとしてるわけじゃない。ただ世界の管理者に認可してほしいだけだ」

 世界の管理者? ゼルってそんな大層な役割を持ってたわけ? ただのはぐれドラゴンじゃなかったの? いや、私ゼルのことよくわかんないけど。
 でもこの場にゼルが召喚されたのは都合が良いかもしれない。

(ゼル、聞こえる?)
(なんだ?)

 声に出さずに私は心でゼルに語りかける。何せ私たちはたましいの回廊で繋がってる。声を出す必要はない。声に出すとバレバレだしね。

(私今、あの星の記憶を集めてるんだけど、そのやり方がわかんないの、助けて)
(記憶か……そんなことを言われても……)

 この役立たずドラゴンめ!! 本当にマナを供給することしか出来ないわけ? それも今や目の前のアクトパラスとゼンマイには焼け石に水だよ。だってこの二人の方が絶対にゼルよりもその力は大きい。人型になってるけど、その漏れ出る力は圧倒的。まさに……神と呼べる領域に居る気がする。

「認可……そんなの貴様らに必要か? 私を殺し、新たな管理者を生み出せば良いだろう。それだけの力はあるように見えるぞ」
「確かにそれも出来ます。ですがドラゴンと事を荒立てるのは気乗りしないんですよ。まだ……ね」
「私ははぐれだ。そこの小娘と契約するくらいの酔狂な奴だ。他のドラゴンは干渉なんてしないと思うぞ」

 ちょっと、何勝手に死のうとしてるのよ。ゼルが居なくなったら、マジで希望が潰えるんだから止めてよね。私自身の力なんてたかがしれてるよ。てか私の利用価値も、多分だけど、ゼルにあるから、ゼルが殺されたら私にも利用価値なくなるから、ここで詰むじゃん。それは不味い。

「そんなことを言うなよ偉大なドラゴン。生物の頂点に君臨する存在だろ? 確かに俺たちはお前もこいつも殺すのは簡単だ。だが、相棒は使う方が良いと言ってるんだよ」

 アクトパラスがゼルを見てそんなことを言ってる。案外こいつら仲いいんだな。一回こいつらの仲を引き裂く方法を考えてたけど、どうやら互いに認め合ってるみたいだし、それは無理そうだ。てか、そんなに私たちの存在は大切なのか?
 いや、わたしはとってもおまけっぽいけど……

(ゼル、本心言ってよ。死にたいの? 約束があるとか言ってなかったっけ?)

 最初契約するときにそんなことを言ってた気がする。それはもう良いのか? それとも数千年経ってるし、その約束実は果たしたとか? 私が寝てる間に? あり得そうで困る。

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