美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H426

 歌によってかつて消えた星が戻ってきた。そしてその星二つ分のマナが周囲に漂ってる。けどこれって……私が使えるようなマナではないはずだ。だって世界が違う。じゃあどうするのか……取り込めはしないがマナはマナ。星二つ分のマナはこのままにしておくにはとても惜しい。

(私はそのためにこれを残してたのです。だから後は私に、貴女は必死に歌ってなさい。想いを込めて……ね)

 スナフスキンの巫女がそんなことを言ってくる。とても優しい声で。私にしか見えてないスナフスキンの巫女は私から離れてエデンの一角に行く。それは私が見つけたなんのためにあるのかわからなった変なオブジェがある場所だった。そしてそこでスナフスキンの巫女が祈り出すと、そこに向かって二つの星のマナが集まっていく。流れ星がいっぱいそこに向かって落ちていってるような光景。

『なにが起きてる?』

 ゼンマイもなにが起こってるかわかってないみたい。ても私だってなにが起きてるかわかってない。ただ歌ってるだけだ。気持ち良くね。歌を通して何か伝わってくる気がするような……そんな気もするけど、ただの気のせいかも知れない。もう会えることはないと思ってたプリムローズのみんなに会えたような気になってるのかも。

(いや、これは……)

 私が稼働させたエデンの中の装置たちが何かうねってる? なんのためにそれらを稼働させたかとかわかってないからね。そもそもこの音だけを再生するのなら、これだけ大掛かりな装置を稼働させる必要なんてないって思う。
 でもそれなりに多い数の装置を私は稼働させた。どうせならその星の力の一部でも回して稼働を手伝ってくれると楽になるんだけど……心が持ち上がってるからなんか楽に感じてるけど、実際には労力的になんら変わりはないからね。
 けどそもそもがマナが違うからね。下手に他の星のマナを回したら、装置そのものがぶっ壊れる可能性が高い。そうなるとスナフスキンの巫女が狙ってることができなくなる可能性がある。
 だからここは素直に歌って頑張るしかない。でも良く考えたらもう歌う意味ある? って思う。多分だけどこの歌ってあの二つの星を呼ぶためのものだったと思うんだ。ならもう役目終わったような? でもまあいいっか。

『なにをしようともう遅い。全ては手遅れなのだ。だから諦めろ』

 そう言ったゼンマイの声に応じて、宇宙さえ飲み込んだ世界樹が再び大量の根を伸ばしてくる。今まではエデンを無造作に攻撃してたけど、今回は明確な狙いが見える。それは今しがたマナが降り注いでる部分だ。多分あそこがスナフスキンの巫女の狙いの一番重要な部分だろうからね。
 そこを破壊してこの現象を止めようって事だろう。けどなんか不思議なことに世界樹の根は刺さってるのにダメージがない? 通り過ぎてるような?

(無駄ですよ。もうこの場所はこの空間にありませんから)

 そんな言葉が聞こえてきた。そしてさらにスナフスキンの巫女はこういうよ。

(さあ、二つの星の力とかつての技術者たちの執念を持って発動しましょう。時魔法『タイムデスケーション』を)

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