美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H421

「ラーゼ様……」

 みんなが祈るようにしてあいつに祈ってる。みんなが絶望してないのはあいつが今も頑張ってるからだ。まさか、あいつが、あのラーゼがここまでやってくれるなんて実は私は思ってもなかった。何せラーゼはかつて、たくさんの人たちの期待を裏切った奴だ。
 あいつのせいで私たち人種はこんな絶滅寸前になってるんだ。それに私はあいつが自分かわいいと思ってるのを知ってる。私たちのことだって、実際は見下してるだろう。
 それが嫌みにはならないんだけどね。なにせそれが当然? というか、こっちも納得してしまうからだろうけど。
 でもだからこそ、最後には私たちのことなんて……って思ってた。でも今、ラーゼはたった一人で戦ってる。一応アンティケイドやヌーディケイド達もいるけど、それが戦力にならないような相手と戦ってる。

 私たちは実際、ラーゼが目覚めたことでうまく回り出して、そしてちょっとした希望を持ってた。けど、相手が自分たちの想像以上に強大である――と今更思い知った。相手は世界……いや、宇宙だった。
 一つの世界の中の小さな存在である私たちではそれはどうしようもなく強大な存在だ。

(いや、強大だってことはわかってたはずよ)

 でも……それでもこれは想像より遙か上だったといわざる得ない。何せ宇宙だ。私にはもう想像すら出来ない規模だ。いや、それはきっとここにいる誰もがそうだろう。
 みんなの世界はこのエデンの地下だけだった。生まれてこの方、ずっとそう。ようやくちょっとはエデンの外を知ることが出来たけど、それは本当にちょっとだけ。
 そんな私たちに世界よりも外の宇宙なんて想像できる訳なんてない。

(いくらラーゼでも……)

 私はそんな風に考えてる。本当なら銃をとって援護に向かいたいくらいだ。でも……私たちではヌーデレリア達をどうにかしてここから出ること出来ない。彼らの上位者は私ではなくあくまでラーゼ。
 あいつが戦ってるって……私たちのためにその身を粉にしてるってしって、私は出て行こうとした。ほかにもそう言って武器を取ってくれた人はいた。何せみんなラーゼのこと大好きだもんね。でも……そんな私たちをヌーデレリア達が阻んだ。
 ヌーデレリア達は小さなヌイグルミの形したラーゼの護衛だ。その護衛たちをわざわざ私たちのためにあいつが残した。それはどういう意味か……そして誰もをこのシェルターからだそうとしないヌーデレリア達。
 それでラーゼの意思がわかる。あいつはたった一人で私たちを守る気なんだ。情けない。そう思って私は下唇を噛む。なんだかんだ反抗しておいて、私は結局ラーゼに守ってもらってる。

 面倒なことは嫌いだとか、汗臭いのは嫌いだとか、暑苦しいのはいやだとか言ってたくせに……いざというときは自分が一番大切だって言ってたくせに……結局は私たちのためにそのきれいな姿をぼろぼろにしながらも戦うあんたのことが……私は――

「だいっきらい」

 そんな風に呟いたとき、このシェルターの天井からでっかい根が下りてきた。そして毒のように濃いマナが私たちの体を犯しにやってきた。

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