美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H419

 ありったけの装置を持ってくるように言ったけど、結局の所、そんなに無かった。五組くらいだ。それじゃあほとんど間に合わない。だって切っても切っても次々と降ってくる。さらには世界樹の根にアンティケイドやヌーディケイド達が絡め取られてたりして、無力化されていく。

「状況ははっきりいって全然不利だね」

 そう呟いてしまうほどには状況が悪い。だって打開策がない。向こうは圧倒的な力を前にそれを押しつけてるだけだからね。策……何て物はないし……私たちは押しつぶされる寸前と言って良い。エデンの一部、三つのパレスに分かれてるその一つが落ちる。地下は別にパレスの分別がある訳じゃないから、エデン自体が欠けたことで、地下の方にも勿論影響はある。隔壁が降りるだろうけど、三分の一がなくなるって相当だ。
 かなりの機能が制限される。

「脱出……したって どこに行くって言うのよ」

 皆を逃がそうか……とかも思ったけど、エデン以外に皆が生きられる場所なんてのはない。それがわかりきってるから逃がすなんて事も出来ない。私がやらないと、皆がこのままだと死んでしまう。

「自重はもうしない」

 私は体内のマナを極限まで高めていく。すると服が弾けてしまった。でも想定内だ。普通の服では私のマナには耐えられない。だからこそ新たにマナで私の服を作る。マナで出来た服は重さがない。上半身は体に沿って張り付くように。そして下半身はふんわりとした花びらのようなデザインにした。

 昔一度だけこの状態になったことがあるけど……そのときよりもかなり楽にできたと思う。私の背中には八つの翼のような物が出来てる。
 まあ鳥の翼のような物じゃなく。細長い光りが伸びてる感じでだけどね。私は銃口を向けて、一斉にマナの刃を撃ちだした。エネルギーが減る? そんなの言ってる場合ではない。

「一発で斬れないのなら何発だって打ち込んでやるわよ!!」

 私はそう言ってエデンに突き刺さる世界樹の根を払っていく。それで強引にでも刺さってた世界樹の根の掃除は出来た。でもそれも――

「いつまで持つかな」

 ――そんなゼンマイの声が聞こえる。確かに世界樹を倒したわけじゃない。私がやったのは根を払っただけだ。そしてそれも一部。いくらだってその代わりはある。きっと向こうは私の力が枯渇するまでやってくるだろう。そして私は他に方法がない。

「こんなの私のキャラじゃないんだけどね」

 私はそう自嘲して根を延々と相手にし始めた。

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