美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H413

「何て言うことなの……」

 これはちょっと想像の埒外というか……スケール感がバグってるというか……こんなの流石にエデンでもどうにも出来ないよ。エデンの主砲でもこの世界を……いや宇宙さえも包んでるような大樹にとってはそんなのは爪楊枝で刺すかのごとくだ。

 しかも私たちの星を外側から捕まえてるみたいだ。普段は見えない。多分ここまで出てきて初めて見える……そんな風に世界は出来てるらしい。

『世界の真実を知ったか? そして己の矮小さも』

 なんか子供のような声が聞こえてきた。私は周囲を見回す。ここには私以外には入れないはずだ。てか……こんななんか寒気を催すような子供の声を発する奴はいないはず。子供の声なんだけど、その中に尊大さが含まれてるのを感じるし……

「誰?」

 私は周囲を警戒しつつそう言った。誰とか言いつつ、このタイミングでやってきそうな奴の心当たりなんて一つしかないんだけどね。ようはどっちか――って事がわかんないだけだ。それとも奴らはやっぱり二人で一つとか? 昔はそうだったような……数千年で何か変わったか?

『私はゼンマイだよ愚かな者よ』

 そう言って私の前に小さな歯車の一つが降ってきた。それは私の目の前で止まる。はっきり言って本当に何の変哲もない歯車だ。丸くて凸凹してる奴ね。本当にそのまま……勿論これが本体な訳ないけどさ……自分の分身をこんなのに宿す? やっぱりゼンマイだからか。

「愚かって何よ?」

 とりあえずそこに反論してみる。私は馬鹿にされることは好きじゃない。

『おろかだろう。今更起きたところでどうにもならないとわかったんじゃないのか?』
「あらそう? 案外まだどうにかなるかもよ?」

 完全に強がりだけど、とりあえず相手の言い分って認めたくないじゃん。だからとりあえずそう言っておいた。

『いいや、お前はわかってる。どうしようもないことを』

 なんか確信めいた感じでそう言ってくるゼンマイ。ぐぬぬ……とりあえず殴って良いかな? ちょっとは気分がスッキリすると思うんだけど……でも私は我慢した。

「もしもそうだとして、ならなんでアンタはここに来たのよ?」

 どうしようも無い力の差があるのなら、さっさと潰してしまえば良い。それをせずにわざわざ交渉に来た。それって何かあるって事でしょ。

『それだよ。もうこの宇宙は手にした。だからもっと更にむこうへ我々は行く。だからお前を連れて行く』
「私がほしいって事?」

 私って何て罪深いんだろうね。どこに行っても求められてしまう。誰からもどんな存在からもモテて困っちゃうよ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品