美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H396

 大量にある世界樹へと近づいていくヌーディケイド達。この日のために用意した、高枝バサミを何人かが持ってる。それを伸ばして枝を一房……パチン――と切った。

 その瞬間だ。

「ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 そんな声がしたのかはわかんない。でも、なんかすっごいプレッシャーというか、なんか不味い――っていう本能が反応したような気がする。私はキョロキョロとするんだけど、ヌーディケイド達は事務的にパチパチと世界樹の枝を切ってる。

 どうやら彼らにはこの感覚はわかんないらしい。まあしょうがないね。アンティケイドなら違うかも。実際私が精神を移してるこのアンティケイドは鳥肌立ってる。

「とりあえずこのくらいで良いよね」

 何か起きるのが怖いから、それなりに回収したらさっさと戻ろう。そう思った。いきなり世界樹自身が襲いかかってくる……なんて事が無いように警戒してるが……どうやら世界はもっと斜め上だったみたいだ。

「ん? 暗くなってきた?」

 いきなりなんか厚い雲が出てきた。この星はアクトパラスとゼンマイが支配してる。これって偶然だろうか? 絶対に違うと思う。私たちが世界樹にちょっかい出したのに絶対に反応してると思う。

 厚い雲は今にも雨を降らしそうででも降らさない。でもその厚みは増してて、それになんかうねるように雲がなってるのがよく見える。普通雲の変化とかそんな顕著ではないでしょ。いつの間にかなんか形が変わったな~位が普通だ。でも……今空を覆ってる雲は逐次変わってるくらいにはうねってるよ。絶対に自然じゃない。

「戻るわよ!」

 私はそう言ってヌーディケイド達を世界樹から放す。そしてエデンを目指した。するとそのときだ――

カッ

 ――と世界が真っ白になるくらいに目の前が白くなった。私は思わず腕を出して力を放った。放ったと言っても、攻撃方面じゃなく、防御に使ったわけだけどね。上の方に傘のように障壁を張った。自分の体じゃないほうが力を制御しやすいっていうね。

 まあ勿論出力は落ちるけど……でも私自身の体では蛇口の弁が馬鹿になってるからね。だからちょっとだけ……と思ってもめっちゃ大量の力が出てくるわけだ。
 でもこのアンティケイドの体なら、そういうことにならない。だから力を使ってもこの体の手は無事だった。まあ勿論無茶すれば大容量の力を持ってくることは出来るだろうけど、アンティケイドの体では欠損したら直せないからね。
 なるべくそういうのはしたくない。てか……

「私グッジョブでしょ」

 思わず張った障壁だけど、それにはどうやら雷……が多分当たった。更に続けて真っ白になる視界と共に、お腹に響くような重低音が駆け抜ける。

「くう!」

 流石に連続して落雷を防ぐのはきつい。てか二回くらいあたったらぶっ壊れる。その度に張り直すけど……不味いね。わたしの障壁の傘から漏れたヌーディケイドの一体が雷をもろに食らって丸焦げになって落ちていく。エデンに強引に行こうにも、雷という強大なパワーに押し戻されちゃうよ。

「神を気取ってるつもりなの……」

 私は悔しげにそう呟くよ。

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