美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H385

「つっ!!」
「ラリア様!!」

 頬をクロスにぶたれたラリアはクロスじゃなく私を睨むと背中を向けて走り出した。何で直接手を出したクロスではなく、私を睨むかな? やっぱりニヤニヤとしてたのがだめだった。いやいや、でも自分にイヤなことをしてる相手が怒られてたら、ちょっとは「ざまぁみろ」って思うじゃん。
 それが人の心理というものじゃないだろうか? 

「すみませんラーゼ様」

 そう言って私に謝るクロス。別に私に謝る必要は無い……というか――

「とりあえず追いかけなさいよ」
「いえ、私たちもラーゼ様と共に戦います!」

 私は戦う気なんて無いんだけど……直接は……ね。ヌーディケイドを行かせれば良いのだ。そして安全策をとって、自分が行くとしても、アンティケイドを分体としていかせるって感じかな。

 それにこのまま私だけで解決したら……それはそれで更にラリアの求心力って奴が無くなると思う。まあ自業自得なんだけどさ……アレでもキララの孫って事で幸せになってもらいたいんだよ? その思いは本当だ。
 だから面倒だなって思ってもラリアのことは見捨ててない。まあこんな世界になってしまったって言う責任感って奴は一応感じてるからね。

「とりあえずこのまま私だけでなんとかしたらラリアの立場が不味いでしょ。あの子にはちゃんと上に立ってもらわないと困るし」
「私はラーゼ様が頂点で良いと思いますが……」
「私は頂点だけど、面倒な事ってしたくないし、雑事は似合わないでしょ」
「確かにそうですね!」

 私はただわがまま言ってるだけだけど、クロスの奴は簡単に賛同してくれる。皆私に甘いもんね。まあそれがラリアが私を気に入らない理由でもあるけど。
 皆何かしらの仕事をしてるからね。それは立場が上でも下でもへだたりがないよう誰しもがちゃんと働いてる。勿論やることは様々に違う訳だけど、でも皆自分が出来ることをやって、この狭い場所で貢献しようとしてる。

 まあそれが過酷な世界で生きるためのやり方だったんだ思う。誰もが必死になって働いて、それでようやく日々を過ごせる……そんな世界。

 けど今はちょっとは余裕ある。それに私は働いてないように見えてアンティケイドやヌーディケイド達を使って働かせてたのだ。確かに私は優雅にしてたように見えるたかもだけど、私が居たからアンティケイドやヌーディケイド達が動き出したわけだ、そこら辺考慮してほしい。

 まあ一人がサボってるように見えたら、他にもサボり出す奴がいるのかもしれない。ラリアは真面目だから、そういう輪を乱されるのがイヤだったんだろう。

「とりあえず現場にはヌーディケイド達を向かわせてる。それで状況を見て、どうするか決めないとね。てか、下手なことをラリアが考えなければいいけど……」

 こういう殺伐とした世界で求められるのって、私のような心をいやしてくれる存在か、それか心の支えになってくれる英雄とかじゃん。私に容姿とかで勝つのは不可能だ。
 それなら……とラリアが英雄を求める……いや、自分自身を英雄としようと無茶をしかねないなって思った。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く