美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H369

「で、何をやってるの?」

 何か不機嫌そうにそう言ってくるのはラリアだ。いつもの黒いぴっちりとしたスーツに身を包んだラリアはシズちゃんとオオランちゃんを見て怪訝な顔をして、そして私を見て眉をつり上げてる。

 そんな風に怒り顔ばっかりしてると皺になっちゃうぞ――とか思うけど、言うと更に怒りそうだからね。

「何って見てわからない?」
「踊ってるわね。それに変な音楽」
「変じゃないよ!? 失礼ね。これは昔、超人気だったグループの曲だよ!!」
「それってアンタがいたグループでしょ? 自分がいたから超人気って……はっ」

 うっわ、鼻で笑われたよ。ちょっとちょっと、この女プリムローズのこと舐めすぎじゃない? もう本当に全国民がプリムローズに夢中になってたんだからね。ライブを行えば満員御礼。むしろ会場の外にまで客が摘め寄せる大人気ぶりだったよ。
 そのプリムローズの歌を笑うとは……この曲の良さがわかんないのかな?

「シズちゃん! オオランちゃん!」
「「はい! プロデューサー!!」」
「何プロデューサーって?」

 シズちゃんとオオランちゃんの私に対する『プロデューサー』と言う言葉にラリアの奴が突っ込んでる。でもしょうがない。だって一度言われてみたかったのだ。プリムローズを作ったときは私もメンバーだったからね。
 プロデューサーではあったけど、でもそう呼ばせることはなかったのだ。だからちょっと心残りだった。いや一応別グループを作ってはいたし、そっちに読んでもらえなくもなかったけど、プロデューサーって肩書きよりもラーゼって名前がめっちゃ強かったからね。あんまり呼んでもらえなかったのだ。なので今回はシズちゃんとオオランちゃんにそう呼んでもらうことにしたのだ。

「プロデューサーはアイドルをプロデュースする人って事よ」
「アイドルって……」
「アイドルって言葉くらいは知ってるでしょ?」
「知ってるけど……そんなのなんの役に立つのよ。二人ともアホなことは止めなさい」
「アホとはなんだぁ!」

 全く、ラリアは全く何もわかってない。そこら辺が駄目なのよ。私はラリアにアイドルの素晴らしさ……いや、必要性を説いてやることにする。

「いいラリア、こんな可愛い二人がアイドルをやらないなんて損なんだよ!」
「馬鹿なの?」

 おかしい、なんか一刀両断されちゃったぞ? 一体何でこの思いが伝わらないのか……私には理解出来ないよ? え? ラリアって可愛いの嫌いなの? いやいや、『かわいい』を嫌いな人種が居るなんて思えない。そんなのが居たら、流石に理解出来ないね。だってかわいいは正義なんだから。

「えっと……ラリアってかわいいが嫌いな人?」

 大切なことだから真っ先にそれを確かめることにした。

「は? それとこれと何が関係あるのよ? アイドルなんて必要ないって言ってるの」
「なるほど、自分の年齢的にかわいいがまぶしいんだね? ――あうっ」
 
 なんか行き成りデコピンをされた。なんてひどいことを……額が赤くなっちゃうじゃん。まあ私はそれでもかわいいけどね! 年齢のことを言ったのが不味かったかな? もしかしたら行き遅れてるのを気にしてたのかもしれない。

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