美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H313

 プリンを食べて満足した私はお茶ももらってた。まあ流石に今の状況だと淹れたて……とはいかない。水筒に入ってた奴だ。プリン伯爵の従業員が持ってた奴だ。
 美味しい……とはお世辞にも言えないね。まあけど文句は言うまい。

「さて、私はそろそろ帰ります」
「え? ですが……」

 私の発言にプリン伯爵は戸惑ってる。なにせ今はこのタワーは戦闘中だ。だからどうやって帰るの? という事なんだと思う。

「大丈夫ですよ。私を誰だと思ってるんですか?」
「そうですね。失礼しました。ですが私たちはいったいどうなるのでしょうか?」

 そこか……私の事が心配しなくていいのなら、次は自分たちの身の安全が不安になるのは当然というのものだ。なにせこのタワーの下では現在進行形で戦闘中だ。断続的に振動は起きてるし、ここは地上から数十メートルの高さはある。倒壊したらまぁまず中の人たちは助からないだろう。
 皆さんが魔法使えればそうとは限らないが、人種は基本一般人は魔法は使えない。なにせ炎を出すとかいうクッソしょぼい魔法を使えるだけで才能あり――だからね。一般人が魔法を自由自在に操れるわけがない。
 だからこそ、人種は他のどの種も頼ってる魔法という力に依存しない力を持ってるわけだけどね。それが科学技術とかそういうのだ。今は魔法と科学合わさってるから、魔法科学だけど。
 でもそれも種全体で他の種と渡り合う的なものだしね。一応護身用の障壁展開できる防犯グッズだってある。それを皆が持ってたらまだ安心できたかもしれないけど……まだ発売したばかりのアレをここにいる皆さんが持ってるとは思えないしね。
 あれがあればこの高さから飛び降りても地面にぶつかってトマトの残骸みたいになる前にそのアイテムが働いて安全に地面に卸してくれるだろう。

 でもあれは一人を対象にしてるからね。一人ひとり持ってないとみんながその方法をとる……なんてできない。しかも直下に落ちるしかないからね。
 なにせ皆さんちょっとでも空を飛ぶなんて力ないし。そうなると直下は戦場である。一般人がいきなり戦場に降り立ったら混乱するだろう。そして戦闘中の場所に降りたら事故が起こらないなんて言いきれない。
 まあつまりは――

「ここで戦闘が終わるのを待つのがいいと思いますよ。軍の人たちが頑張ってくれてますしね。大丈夫でしょう」
「本当にそうでしょうか?」

 まあ不安がぬぐえないのはわかる。それはプリン伯爵だけではなく、周囲の人たちもそうだろう。泣いてる子供とか、不安がって頭抱えてる人とかいっぱいだし。

「人種は強くなりました。信じなさい。それに私の言葉が信じられないと?」
「そんなことはありません! ですが……やはりみな……」

 そういってプリン伯爵は従業員達を見る。彼にとって大切なのは自分のために働いてくれてる従業員達なんだろう。それは悪いとは思わない。目の前の知り合いよりも、何の縁もない誰かを心配するなんてそんなの胡散臭いし。
 でもそうだね。万一、プリン伯爵達の身に何かあったら、この新作がお披露目されることなく、永遠に失われてしまうかもしれない。
 きっと誰かが同じようなものを作るとしても……だ。

「わかりました。私が戻って救助隊を出してあげますよ」
「本当ですか!!」
「私にその程度できないとでも?」
「いえ……ありがとうございます!!」

 まあプリンのお礼だと思ってくれればいいよ。私はエデンを治めるトップオブトップだよ? そのくらい朝飯前である。そういう訳で、私は残ったプリンを冷蔵庫に早めに入れときたいから、帰ることにした。

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