美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H310

「して、そうなるとその箱の物はどうなるんでしょう?」

 私はキランと目を光らせて本命を狩りに入った。なにせ私の目的は最初から来れである。この箱の中にはいってるであろう、プリン銘菓の新作だ。
 
 ゴクリ――と思わず喉が鳴りそうだ。早く食べたいな。だから早く献上しなさい。ありがたいことでしょう。この私に献上できるってね。私が一言「美味しい!」といえばたちまち巷で大流行間違いなし! だからね。 それだけの影響力が私にはある。カリスマとは私の事だ。

 大丈夫、今日はお忍びだけど、ちゃんと明言してあげるから。プリン銘菓の新作は最高! とね。まあもちろんおいしかったらだけど。そこら辺は私厳しいからね。
 さあはよ!

「そうですね。残念ですが今日は出番がないようです」
(うんうん、出番がないから私に早く献上しなさい)
「数もありませんし、内々で処分をしようと思います」
「ちょっと待ちなさい」

 そうじゃないじゃん! ほら、ここに最高の宣伝対象がいるでしょうが! 商才ないのかこいつは。そんなわけないでしょ。

「ほら、確かにその新作を真っ先にお披露目する機会がなくなったのは残念です。ですがですね、ほらここに最高に箔を高める存在がいますよ?」
「それは……つまりそういう事ですか?」
「そういう事です」

 通じたよね? 通じた筈だ。 プリン伯爵は私を見てコクリと頷いてるし。

「お前たち。それをここに」

 ほら通じた。そうそう、それでいいんだよ。もうなんか期待でさっき食べたばかりの筈なのにおなか減ってきちゃったじゃん。大丈夫、デザートは別腹……とは言わないけど。私は太ったりしないから全然食べられる。
 世の女性には悪いけど、私って全然太らないんだよね。従業員達が箱を私の前に持ってくる。

「それではこれがプリン銘菓の新作のお菓子になります」

 プリン伯爵のそんな口上と共に従業員が箱を開け――

「うわああああ!」
「きゃあああああ!!」

 お忘れかもしれないが、今このタワーの下では戦闘が繰り広げられてる。その振動が伝わってきた。私はその瞬間、とてつもなく集中して力を高めた。

(私は絶対に新作スイーツを食べる!!)

 頭にはそれしかなかった。大きな揺れは箱を支えてた人のバランスを崩して、蓋を取ろうとしてた人のバランスも崩してる。中のスイーツは固定とかはされてないみたいで、斜めになった箱を滑るように透明な容器が転がろうとしてる。

 ここまで刹那の時間だ。中には六つの容器が入ってたみたい。

(全部守る! いや、守ってみせる!!)

 私の決意は地層よりも固く、天にも昇る尊さだったと思う。

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