美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H286

 戦場をなんと表すというのなら……ああそうだ、地獄……その表現が一番ぴったしくるだろう。寧ろ戦場を楽園なんて言葉で表す奴がいるなら、そいつはきっと精神異常者なんだろう。そうであるはずだ。なにせさっきまで会話してた相手が、物言わぬ肉塊に次の瞬間にはなってるかもしれない。

 自分は違う――特別だ――選ばれた人間なんだ? そんな思いはきっと一瞬でなくなって、引き金を無心で引くことになる。なにせ今の俺がそうだ。

 戦場に出ても、活躍できると……そんな事を漠然に思ってた。もちろんここまでで、そんな思いはなくなってたわけだが、さっきの自分の発言を後悔せずにはいられない。

(なんで俺はこんなところにいるんだろう?)

 目の前に迫る炎をまとった種がその口元に煌々とした光を集めてるのを見ながらそんな事をおもってた。ダンプは何台も沈められた。それでもあきらめることなく進軍して言ってるが、マグマから出てきてる炎をまとったその敵は、多くても百をちょっと超えるくらいだろう。
 だが、強い。俺たちは隊列を組んで、シールドを展開する部隊とその後ろで一斉に銃を撃つ係と、して山の中へと至る道を見つけるためのダンプ部隊とで別れて行動を行ってるわけだが……シールドはさっきから何回も破られて、犠牲者は増え続けてるし、ダンプだってそうだ。無謀と思える特攻を何回もやってる。マグマの上で沈むダンプに乗ってると、助かりようはないだろう。なにせ逃げ場なんてものはない。
 空でも飛べないと……いや空を飛べたとしても、空も今は地獄だ。戦いは地上よりも激しい。

(お願いだ。行ってくれ! 今度こそ!!)

 そんな思いを誰もが持ってる。俺は隊列を組みなおしてシールドの後ろから撃つ役をさっきからやってる。撃ち続けて、エネルギーパックがなくなると、後方に下がって交換、その間はまた別の人が前にでて、交代してる。それを繰り返してた。

 なにせこっちはマグマの上を進めないのだ。だから後方からダンプを支援するしかない。ダンプの部隊は何か目的があって、無謀な特攻を繰り返してるから、それを守るためにも弾幕をとぎらせるわけにはいかない。でもダンプの周囲で警護できるわけではないから、戦術の幅として狭い。何度も失敗してるのがその証拠た。
 ダンプはマグマの方へと行くということは敵に近寄るわけで、俺達が一定の距離から撃ち続けるしかないのに、護衛対象が近づくんだから無謀というしかない。

 そして百以上もいて、獲物は勝手に近づいてくるのなら、向こうもそれなりに余裕があって、こっちにも攻撃をむけてくる。それはシールドを破って俺たち銃を撃ち続ける役目の奴らにも届いてた。

 そうシールドを破られるというのはかわかってるんだ。でもこれ以上先にも後ろにも行けない俺たちはただ的になるとわかってても銃を撃ち続けるしかできない。

(ああ、今度は俺の番か……マサシ俺もすぐにあいに行くことになりそうだ。ああ、なんであの時、後ろに下がってれば――)

 シールドを壊されるとわかってても、その瞬間まで俺は引き金を引き続けた。

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