美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H284

「もう大丈夫だ」

 そんな事を言われて俺は力が抜けた。なにせまだ俺は生きている。なんとか……だが、まだ生きてるんだ。新たにきた部隊は、重武装にいくつものダンプを伴ってて、隊列を組んだダンプは少しずつ、オウラムの街へと近づいていく。とりあえずは二台のダンプでコンビを組んでるのか、二台はとても近くに常にいるようにしてるみたいに見える。

 ダンプの特殊な装備の攻撃? で操られて人たちは気を失ってしまってる。けどさらに増員されたわけで、どうにかまだやれる……のか? はっきり言って、俺たちの部隊には撤退命令が出て欲しいと、心から思ってるんだけど……だって俺はまだ学生なのによくやったと思う。一応負傷者は数台のダンプに乗せられて後方に下げられてるが……

「君の部隊は全滅か?」
「いえ、そういうわけではないみたいですけど……」

 俺は肩を叩いてくれたその人にそう言いつつ、一つのダンプをみる。部隊だったのかは実際わからない。だって俺は学生で余分なつけ物みたいなものだった。
 けど一応近くにいたその部隊の人たちはダンプに乗せられて行ってた。

「名前はなんだ少年?」
「はい! マサシであります!」
「マサシ少年は軍属なのか? 周囲よりも若干幼く見えるが?」
「自分はなんと言いますか……学生であります。なぜか戦場に送られていました!」
「ふむ……相当やる気があるか、やんちゃな奴というやつか」

 なんかその人がぶつぶつとそう言ってた。俺はそんなやんちゃに見えるだろうか? 結構死にそうな顔してると思うんだが?

「マサシ少年、まだやれるか? それとも下がるか?」

 下がる−−なんという甘美な響きだろうか。だって俺はここにいるべき人間じゃない。少なくとも今は……だ。確かに俺はいつかはこうやって戦場に立つと覚悟はしてた。けどそれは学校を卒業した後で、あと一年くらいはあると思ってた。だから俺が命を晒すのは今じゃない。

「自分は−−」

 俺の口はすぐに動いた。もちろん「下がります!」と言おうとしたんだ。けど、なんか口がそれを言わせてくれない。どういうことだ? 俺は下がりたい! 下がりたいと心から思ってるはずだ!! その気持ちに偽りなんてない。けど……何かが俺のその言葉を邪魔してる。それは外部からの何かではなく……実はいやらしい俺自身の内面だ。

(ここで功績をあげてみろ。俺はヒーローだぞ。まだ帰るのには早い。新たな援軍だってきたんだ。流れはこっちにきてる。勝ち馬に乗らないでどうする? 学生で参加してるのなんて俺くらいだ。生きて帰れば、どんな女子だって俺にメロメロだ。勲章だってもらえるかもしれない)

 そんな打算。それか俺の言葉を止めて……そして−−

「−−やります! 人種の為に自分は戦いたい! その機会が早く与えられたのは幸運であります!!」
「よし!! よく言った!」

 俺はすぐにこの言葉を後悔するとも知らずにそう言ってた。

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