美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H268

「「「きゃああああああああああああああ!! きゃああああああああああああ!!」」」

 そんな歓喜の声を皆が上げてる。一部の子たちは腰が抜けたかのようにその場にへたり込んでしまった。でもそれも仕方ない。なにせラーゼ様は私たちの憧れなのだ。そして崇拝の対象でもある。だってラーゼ様が『アイドル』という存在を作ってくれたから、私たちは夢というものを持つことが出来たんだ。

 ラーゼ様が人種の立場を変えてくれたから、国は豊かになって、夢を持つ余裕が生まれた。本当ならここにいる子達の大半が、夢なんてものを持たずに生きてたはずだ。
 なにせ毎日が戦いだったんだ。今日を生きて、明日を迎えるために、ただ生きる。そしてそれが出来なくなったら死ぬ……そんな毎日だったはずだ。
 でもこの国は変わった。大半の人は食べるのに困らなくなって、明日を安全に迎えるようになった。そうなると次は「明日は何をしようかな」って思える。
 夢や希望を見れる。そうしてくれた人がいて、そしてその指針をくれた人が目の前にいるんだ。それは興奮しないほうがおかしいよ。なにせいきなり何をしてもいいって言われても、私たちはこれまでの生き方以外に知らないし、それこそ私たちのお母さんやお父さんたちだって、今までの生き方しか知らないわけで、余裕ができても実際はそんなに変わらない毎日だった。

 そんな中で、プリムローズはセンセーショナルに現れた。キラキラとした衣装、体が思わず踊りだしそうな歌。それは心に衝撃を与えたんだ。

「皆さん今日はなんとラーゼ様がこの学校に来てくださったわよ」

 そういって皆を集めて、校長がいう。でも皆、校長の話なんて聞いちゃいない。だってまぶしいもん。ラーゼ様がまぶしすぎて寧ろ校長の姿さえ見えないよ。

「皆さん邪魔してごめんなさい。貴方達と同じステージに立てる事を楽しみにしてますね」

 そういってラーゼ様かニコッと微笑んでくれる。その瞬間、私の鼻からは鼻血がでてきた。あまりの神々しさに興奮が限界突破してしまったみたいだ。私は後ろの列にいたからそれくらいで済んだ。けど、一番前にいた人たちとか、バタバタと倒れていく。彼女たちはラーゼ様の神々しさに耐えられなかったらしい。いや、私もあの笑顔をもうちょっと近くの場所で見てたら、きっと同じように倒れてたと思う。それくらい、魅力的な笑顔だった。
 実際私たちはラーゼ様に会うのはこれが初めてじゃない。この学校に入学したときにラーゼ様からお祝いの言葉を賜ってる。けどそれからは全然で……いや、時々来てらっしゃるみたいだけど、運がよくないと会えないんだ。

 とりあえず前の奴らが軒並み倒れたから、立ってる人たちで質問ができるらしい。これはチャンスだ。自分を売り込むことが出来るチャンス。
 でも何をいえば……とか、ラーゼ様に始めに話しかけるとか、恐れ多い気持ちとかが相まって、なかなか皆踏み出せずにいる中、隣の奴がトテテと歩みを進めた。そしてラーゼ様の前で止まって彼女をまっすぐに見てこういった。

「ラーゼ様、好き」

 そうしてそのままラーゼ様の胸に飛び込む。さすがにそれには私たちも憤慨するほかないよ!! なにやっちゃってくれてるの!? うらやま――いやけしからんでしょ!!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品