美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H265

 アイドルスクールにきた私は、そこの校長である男性にあってる。私が男性に一人で会うなんてまあ危険なんだけど……この人は別だ。何故かと言うと……

「ようこそお越しくださって光栄ですわ、ラーゼ様」

 高い身長に筋肉質な体。ぴっちりした服になんかやけに尻を突き出した歩き方をして、クネクネと腰を捻るその人は、丸坊主の頭に濃い化粧をしてる。そして濃ゆい顔。
 
「いえいえ、私も次代のアイドル育成には興味あるからね」
「ふふ、金の卵がたくさんいますよ」
「それは楽しみだね」

 アイドルスクールの校長は、こんな喋り方だけど、実は男である。まあいわゆる、男だけど、女のように振る舞う人なのだ。

 なんかとっても私の影響を受けたらしい。いっとくけど、私の影響を受けたからといって、私には似ても似つかないからね。
 そもそもが彼ははっきりいって、そこらの男性よりも男らしい体なんだよね。筋肉質というか……でもなぜか……いや何故ではなく、きっと彼の努力の賜物なんだろうが、お尻だけはやけにプリプリとしてる。

 はっきりいって彼のような人はかなりこの世界では生き辛い事だろう。実際、私が拾うまでは彼は軍にいて、かなり肩身の狭い思いをしてた。はっきりいうと「気持ち悪い」とか言われて孤立してた。
 でも彼の強さというか、優秀さは評価されてたんだよね。まあそれで私も知ったわけだし。私にはこの世界とは別の世界の記憶があるから、そういう人もいるよねーで済むけど、この世界の人たちはそんな存在を受け入れる下地がないのだ。

 だから私が会った時はかなり追い詰められてた。でも今の彼、彼女? はとても生き生きしてる。ある意味この人がこのスクールの象徴みたいになってるからね。

「知ってる? 戦いが始まったって」
「外が騒がしいですから察してますわ」
「うんうん、まあここの子たちは軍属ではないから、別にそこまで関係はないけど、あれはどうなってるのかな?」
「反応を示すことはできてますわ。やはり歌はマナの真相に訴えかけることができるみたいですわね」
「プリムローズのマイクと組み合わせれば、なかなかすごいことができそうだね。でもそれにはやっぱり数が必要かも」
「アイドルを集めることが必要だということですわね」
「そういうことだね」
「既に勝った時のことを考えるとはさすがラーぜ様ですわ」
「だって勝った後だって大切でしょ? この戦いで、世界が壊れちゃったら、そんなの意味ないんだしね」
「それはそうですわね。あの子たちもせっかく頑張ってるのに、それを披露する場がこないというのは悲しいことですしね」
「そう言うこと。それにきっと自信にもなるだろうしね」
「ありがたいことですわ。その歌はありますの?」
「新曲として作ってるところだから、できたら練習してね」
「了解ですわ」
「さて−−」
「もういってしまわれますのですか? ラーぜ様の姿をあの子たちにも見せてくれませんか?」
「いいよ」

 まあ私も憧れの目で見られるって好きだしね。ちょっと優越感でも満たしに行きますか。そう言うわけで、私は校長とともに、アイドルの卵たちの前に行くことになった。

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