美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H245

「ラーゼ様はまだか?」
「あの方は今は入浴中だ。我らのために身を清めてくださっている。湯上りを拝めるのだ。ありがたいと思わないか?」
「う……む、それはそうだな」

 大きな室内は煌びやかなシャンデリアに照らされてる。壁は複雑な模様と装飾、そして絵画に彩られ、調度品の一つ一つがそれこそ目が飛び出す額の物が揃えられた最高級の会議室に、このエデンとそして人種の上層部が集まってる。

 皆さん、きっとさっきの会話でラーゼの姿を想像してるんだろう。湯上りラーゼの肌の張りつやつやとしたまっさらな体。一部分が何やら起き上がろうとするが、きっと皆さん必死に我慢してるんだろう。

「まったく、下半身に素直な方ばかりですね」

 そういうのは僕の隣にいる女性だ。まあ妻だが。つまりはキララだ。彼女も人種のかなめでありそして聖女と呼ばれ皆から慕われている。
 戦力であり、人種の支えといっていい。彼女はラーゼから供給される力をそのまま使える稀有な存在だ。ラーゼのほぼ無限といっていい力。それは小型デバイスを通じて、恩恵を得られるようにエデンも我らもなってるが、キララほどその恩恵に預かれるかというとそうではない。

 なにせやはり大きな力にはリスクがつきもの。ただでそんな力は手に入りはしないのだ。もちろんそれはキララも同じ。確かにキララは特別だったみたいだが、それだけなのかと……実はキララは昔はひどい目にあってた。
 なにせ獣人たちに人間兵器として使いつぶされるはずの存在だったんだ。だからその時に、いろいろと体をいじられたのでは? という見解というか、実際アンサンブルバルン様からも多少なりの肉体改造は行われてた……と聞いてる。その影響はほぼ、今のキララには無いようにみえるが……もしかしたらその時の何かが作用して、キララは特別にラーゼからの力をほぼそのままに受け入れることができる体質になったのでは? ――という観点からの研究もおこなわれてる。

 もしもそうなら、我々人種が、さらに強くなることが可能だ。もちろん上にラーゼという力を供給してくれる存在が不可欠だが……あいつは働かなくていい――って言ったらやってくれるだろう。刺激がないのはつまらない……けど働くのも嫌だって日々常々いってるからな。

「まさか、カタヤ様は違いますよね?」
「うっ……」

 俺は背筋を伸ばしてその問いに答えてみせる。なにせ男はあれが元気になると、自然と前かがみになるものだ。だから、こうやって背筋ピーンとできない。あるところがピーンとなるからだ。
 これでキララもわかってくれるだろう。

「流石です。まあラーゼは仕方ないですけど……なるべく私以外に目移りしないでください」

 確かにラーゼは視界に入れば時を忘れてしまうほどの存在だ。けど、キララも人種の中ではかなり上位に位置するほどには美しくなった。日々ラーゼが考えた美容方法を試してるおかげだろう。それに魔法の研究にも余念がないようだ。主にきれいになる方向への。あと老いを遅行させる感じのやつとか……ラーゼの力を無尽蔵に使えるキララは、そこら変に果てしなく積極的だ。
 まあだが、妻が美しいのは王である自分にもいいことだと思ってる。それにちゃんと愛されてるって感じるし。いつだってキララはいう「奇麗になるのは、カタヤ様のためですよ」って。

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