美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H242

「くっ!?」

 王の剣は確かにラーゼの体を貫いた。けどその瞬間、ラーゼは自爆をした。それもマナの反作用を利用した超爆発だ。これが空だからよかったものの、地上でこいつを爆発させてたら、オウラムという国は跡形もなくなっていただろう。

『危なかったな』
「まさか自分が一番かわいいとか思ってるあいつが自爆なんてするなんて……」

 俺はアンティカの内部でシズルスと会話をしてた。普段はこのアンティカはシズルスが動かしてるわけだが、今は二人で動かしていた。
 シズルスの方がアンティカの制御が上手く、俺ではないと、アンティカで王の剣を使うことが出来ないからだ。

『あれは本体ではない。器が粗悪だったからな』
「それって、身代わりだったということか?」
『ああ、木偶人形だろう」
「なるほど」

 それなら納得だ。そもそもがラーゼがここまで来るのもそもそもが違和感があった。でもあの体が人形だというのなら、あり得ると思える。

「それよりも見えたか?」
『なんとか、解析は出来そうだ。なにせ『可愛い』は世界の理で守られる。確かに王の剣ならその理を無視して奴を殺すことは可能だが、それだけでは足りないのだろう?』
「ああ、あいつを確実に倒すためには、こちらも理を作る必要がある――つっ」

 俺は頭を押さえた。短いが鋭い頭痛の様なものがきた。進化したと言っても無理し過ぎたか。俺は獣人を超えた獣人になってるが、実際はものすごく内包できるマナが増えた……というか感じくらいだ。
 もともとが獣人は肉体で戦う種だから単純にマナが増えれば力も守りも増す。だが、特別な何かが追加されたわけではない。これなら、獣人に楔がある理由がわからない。
 多分俺はまだ完全には進化しきってないのかもしれない。だからこそ可能性を感じてる。あのラーゼを倒す可能性を。

「貴様、よくも……まだ我はこの程度では終わらんぞ」

 どこかから聞こえるそんな声。アクトパラスとゼンマイの融合体だろう。セーファの話ではあいつは源泉をおさえてるらしい。なら、セーファと同じ原理でどこかの源泉で復活をする気なのかもしれない。
 けど、せっかくだ何もできない状態になってるだろうし、少し話をしてみよう。俺たちの共通の敵の話を。

 確かに俺たちも敵同士だ。それは違いない。もしもアクトパラスとゼンマイの融合体が世界の覇者の夢を捨てるのなら、完全に手を取り合うこともできるだろうが、それは期待してない。
 でも俺たちは三つ巴なわけで、絶対に見過ごせない相手がラーゼだ。世界樹を手にしてるというのはそれだけ大きい。だからこそ、まずはラーゼを……人種を滅ぼす。その話を聞いてもらおう。

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