美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H234

「ごちゃごちゃとうるさい奴らだ。頂点に立ったというのなら、その力で語れ!! それが世界の意思だ。これまでも、そしてこれからもな!!」

 私のマナをゴリゴリもっていくセーファの奴が全身を滾らさせて一歩を駆け出した。

「あつっ……」

 その熱気に思わず私はそういうよ。一応配慮してくれると思うけど、それでもその熱気が私に熱をもたらした。マナを循環させて防御力をめっちゃ上げてる私に熱気を感じさせるとは……流石は炎をつかさどる不死の鳥。

 全身を滾らせたセーファはそのまま触手が覆おうとしてる源泉のコアの場所へと突っ込んでいく。ぼこぼことさらに増殖するタコの脚の様な触手。でもそれがセーファに触れることはない。
 なぜなら、セーファに触れる前にその滾った炎によってこんがりと……ではなく、まさに灰になってしまうからだ。触れてもないのに灰まで行くのが怖い。色々と工程すっ飛ばしてる。でも多分そこまでの熱量なんだろう。
 そう考えると、私のマナ循環の防御力強化もチートしてるね。あれをただ「あつっ……」で済ませられたんだからね。まあセーファが私にその熱気を向けてたわけじゃないってのもあるとは思う。
 
 セーファは明確にアクトパラスとゼンマイを敵とみなして、その熱気を盛大にぶつけてるんだろう。だからいくら触手が増えようが意味はない。今のセーファを止めるには海でもぶっかけるしかなくない? それか私やエデンの砲撃か。あれは純粋なマナのエネルギー砲だ。それなら別段熱の影響を受けることはないから、セーファ自身にまで届くはずだ。

 それでもみっともなくあがく触手。多分アクトパラスとゼンマイ自身も攻撃をしてるんだと思う。でもそれでもセーファを止められてない。

「うん?」

 いきなり私からセーファへと供給してるマナの流れが止まった? というか、切断された感じがする。

「セーファ! 切断されたわよ!?」
「問題ない、それにその服は私とお前の共鳴を強めてる。奴らの妨害など乗り越えられる筈だ!!」
「ええ? どうやって?」
「踊れ!」
「…………はい?」

 何言いだすのこいつ? 一応だけど、ここは戦場だぞ。そこで踊れって……確かに私はプリムローズとしても活動してるから、ダンスの知識はある。というかアイドルのダンスをこの世界へと来訪させたのは私だ。けどこの場合の踊りってアイドルのダンスというより、きっと儀式的な奉納な感じだよね? それは知らないからなぁ。

「巫女は踊るものだと決まってる! それによってあがめる対象と一体となると言われてるからな!」
「踊りはなんでもいいの?」
「私は個性的な方が好きだぞ」
「あっそ、なら――」

 奉納的な奴じゃなくていいらしい。まあちょっと恥ずかしいけど、どうやらセーファは本当にただアクトパラスとゼンマイに力を開放してるだけだし、踊ってサポートくらいはしてやろうじゃん。実際このままでもなんとか触手を燃やし尽くせそうではあるんだけどね。
 でも確実に源泉は開放しておきたい。そのあとに私の手中に収めたいところではあるけど……その時の状況によるだろう。とりあえず私は頭にプリムローズの曲を流しつつ、踊りだした。

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