美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H224

「ちょっと、放しなさいよ!」

 私はなんとかこの手を振りほどこうとするけど、いかせん、死に体のくせに力が強い。

「むむ……げ、勝手に私のマナを持ってくな!!」

 こいつ、私のマナを吸い取ってるよ。そのせいで元気になってきたのか、さらに力が強く……痛い痛い!!

「ぬあ!!」
「きゃああ!?」

 私のマナで元気を取り戻した火の鳥だった女がマグマを吹き飛ばした。私はつかまれてたから吹き飛ばされることはなかったが、もう腕バッキバキだよ。

 まあアンティケイドの体だし、どうにでもなるけどね。消滅したわけでもないし。この程度ならアンティケイドの自動修復機能で勝手に治ってくれるだろう。それよりも……だ。

「なんだ貴様? 異様なマナを持ってるな?」
「うっさい、まずは感謝したらどうなのよ?」
「ふ、そうだな。助かった」

 案外素直に感謝を言ってきたな。なんだっけこいつ。確かエデン争奪戦の時に多分こいつもいたはずだけど……炎をまとった鳥の姿してたし、多分こいつがこの山を支配してる種なんだと思う。もしもほかに同族が一体もいないとかなると……かなり上位だし、特殊な種なのかも? 

「何があったわけ?」

 なんかこいつのおかげか、溶岩が私たちの周囲を避けていく。なので心配することなく言葉をぶつけることが出来る。まあ私がラーゼだとばれたら燃やされそうだからひやひやだけど。防御できると思うんだけど……炎とかに特化してるだろうこいつの炎はきっと特別性だろうからね。
 完全に防ぎきれるかは正直わからない。さっきこいつに私のマナをとられたからか、アンティケイドの体の内側で暴れまわってたマナが少し落ち着いたのは僥倖かも? でも最悪、こいつに対して使うことになるのはちょっともったいない気もする。
 私の狙いはあくまでもアクトパラスとゼンマイだし、そこにこいつら以下、オウラムの重鎮どもがそろってることが望ましい。あっ、ウサギっこ除くね。
 真っ赤な長い髪に、鋭い瞳は金色に輝いてる。さらにかなり人に近い体からは炎が湧き出てて、それで局部を隠してる感じある。まあ手や足からも炎がたぎってるけど……でも不思議と熱くはない。いや、周囲が熱いからこいつの熱も交じってるだけなのかもしれないけど……

「やけに偉そうな奴だな。その衣装を着てるということは、私への供物だろう? いいからもっとマナをよこせ。今までで一番上質なマナを持ってるぞ」
「それは当然ね」

 私は胸を張って威張る。だって褒められて悪い気はしないし。

「しかし、貴様の様なマナを持つ奴がいたか?」
「…………別にいいじゃない。それに私はなかなかにいい衣装だから着ただけ。でも私はそう、凄いからマナを分けてもいいわよ?」
「なるほど、通りすがりか。協力してくれるならありがたい」

 なんだ? こいつ結構ポンコツか? 見た目違うけど、マナでバレるって思ってたんだけど……まあいっか。

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