H209

（母よ、大変です）
（どうしたの？）

　空にとどまる為に、マナを操作して私は足元に板みたいなものを作った。板と言っても固くはなくて、かなりふよふよしてるから人によっては不安になるかもしれない。けど、大丈夫、雲に乗ってると思えばいい。簡易的なバージョンだからこれでいい。

　とりあえず今はメル言葉に意識を向ける。

（どうやらこの世界で他のマナが生み出されてるようです）
（……どういう事？）
（つまりは、我らがクリスタルウッドとは別にマナを生み出す存在がいる）
（そんな事……あるの？）
（事実として、既存のマナが少しずつですが減少して、新たなるマナに置き換わってるようです）
（それって赤いマナに成ってるってことよね？）
（母にはそう見えるのですね）

　むむむ……どうやら裏でコソコソとやってたのは私たちだけではなかったらしい。まさかアクトパラスやゼンマイといった上位種共がコソコソとやるとは……普通の上位種とは考え方が違うのかもしれない。
　生まれたときから強い上位種は自分の力に疑いなんてもたない。だからこそ、力をぶつけ合うっていう戦いに決着するわけだけど……もしかしたらアクトパラスとゼンマイはそんな上位種達を手玉に取って頂点を取ったのかもしれない。
　けど、世界のマナを置き換えようとしてるとか……ぞれってどうやって？　てか、出来るの？　まあ上位種は尽く規格外だし、絶対にできないなんて言えないけど……それに実際起きてるわけだからね。

（これって私たちの事を意識してるってことよね）
（そうですね。このままでは、世界のマナの力を操れる母や魔王は弱体化することになるでしょう）

　厄介な……確かに上位種共はクソチートだが、世界のマナを掌握してる私の方が上だと思ってたのに……どうせなら、魔王だけ弱体化させてよ。まあけど、アクトパラスとゼンマイにとっては私も魔王も同じく邪魔な存在だ。だからわざわざ区別なんかしないだろろう。

（そもそもどうやってアクトパラスやゼンマイはマナを生み出してる訳？　全く違うマナっ世界が違わないと生まれないんじゃない？）
（可能性の一つですが……奴らは新たなる世界樹の創造を行ったのかもしれません）
（そんな事……）

　出来るの？　当然の疑問が私に浮かぶ。でもメルは鋭い指摘をしてきた。

（母もしたではありませんか。いまの世界樹のあるかの地に元々世界樹はありませんでした）
（なるほど）

　確かにその通り。私は知らず知らずに凄いことをやってしまう。ごめんね凄い美少女で。