美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H164

 さて、ぬいぐるみが何を伝えきたかというと、それはあれだ、私たちよりもこの世界で幅を効かせてる奴らがとうとうオウラムと接触したという情報を伝えてくれた。むふふ、今や既に最上位種とか言うほどになったと思うが、どうやら頭は退化してしまってるみたいだ。残念なことだね。本当に私の狙い通りだよ。私は残ったお菓子に舌鼓を……

「ラーゼ様、食べ過ぎは良くないので、残りは片付けますね」
「ちょっとー! まだ行ける! まだ入るから! それにデザートは女の子には別腹だから!」
「なんですかその別腹というのは? お腹が2つあるようには見えませんが?」

 なんか私付きの一人のメイドの視線がお腹に集まっていたい。その視線がちょっと険しいもののように見えるし……ああそうか。

「私、いくら食べて太らないんだよね〰」
「そうですか、でも体には食べ過ぎはだめですよ。栄養学とかいうの、ラーゼ様が提唱なさってたではないですか。発案者がきちんと例を見せてくださいませんと……ね」
「ぐぬ……」

 そもそもがその栄養学ってのは私がこの世界の料理とかお菓子の活性化を目指して提唱したんだよ。なにせ人種はずっと冷遇されてたからね。偉い奴らが食べてたものだって、実際はめっちゃ美味しい……なんてものはなかった。むしろ食べ物でいえば、ライザップにいたときの方が良かったしね。それだけ人種は弱かったのだ。なので食べられればなんでもいい……美味しいなんて二の次では味の研究なんて後回しにされて当然。

 そこで私は豊かになった今、ちゃんとした健康を維持するためにいう名目で、栄養学を提唱したのだ。そしてそれはあたかも私という超偉い奴が下々まで思ってますアピールだと思われてるが、本当は違う。私は下々のことなんてそこまで考えてない。だって私は自分が良ければいい。周りはまあ、私よりは下のグレードにいて私を見上げてはいいって程度だ。勿論あんまり悲惨な状況だと、私が気持ちよく優越感に浸れないからだめだよ。
 私はそこまでクズではない。下々を殺し合いさせてそれを鑑賞して楽しむ趣味もないしね。私は基本平和主義でおこぼれで発展させてあげる優しさがあるのだ。そんな慈悲深い私の提案は実は私が美味しいものにありつくため。なにせ私は料理なんてしない。だって私は偉いんだよ? 偉いんだから料理人なんて雇えばいい。けど、この世界の料理人はまだまだだ。だから自分のためにも育てる必要があった。
 それも正当な理由でね。だから栄養学っていう大層な言葉をもたせて説得力を高めたのだ。そしてそれは大当たりだよ。なにせ料理を研究するのは、人種全体のためという大義があるのだ。なのにそれを提唱した私が、なんで美味しいものを我慢しなくちゃいけないのか! こんなの本末転倒だよ! 

「じゃあ甘いジュースを!」
「紅茶いっぱい飲んでましたよね? なんでも取り過ぎはよくないとか、栄養学にありましたよ」

 四方八方塞がれた私は、栄養学を取り消そうとしたけど、既に走り出して広まったものは私の鶴の一声でもどうしようもなかった。うん……あれ? 何か重要な情報があった気がするけど……まあお菓子とかよりも重要なことなんてこの世に無いよね!

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