美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H157

(無事でしたか)
(それはこっちセリフだけどな……)

 アンティケイドがモノクロのアンティカに踏み潰されてしまってるこの状況だぞ。そのセリフはこっちが言うのが正しいと思う。だが、生きててくれたのは助かる。

(何があった?)
(何というほどでもないですよ。火口から侵入するのは簡単でした。ですが、アルス・パレスへとついた瞬間に、アンティケイドが走り出しましてね。そしてそのまま、あのアンティカへと飛びついたと思ったら、摘まれて、床に捨てられて、そのままあの通りです。あっという間の事だったので、自分とは距離が離れててそのまま隠れていました)
(なるほど……)

 何やってるんだあのアンティケイドは。だが……流石にただの暴走ではないのでは? と思いもする。だって流石におかしい。なにせあのアンティケイドはラーゼ様が送り込んでたやつだ。命令にはとても忠実なはず。そんな奴がいきなり暴走しただけというのはなんか違和感がある。

『おい、こちらの質問に答えろ』
「ぐあ!?」

 サポと思考で会話してたから……なんて言い訳はしない。なにせ敵を目の前にしてたんだ。いつだって動けるように警戒してた。確かにダメージがでかくて、そんな俊敏に動けはしないが、それでも反撃くらいは出来る準備はつねにしてる。なのに……今俺はアンティカの手の中に握られていた。おかしい……俺達とアンティカでは高さがかなり違うぞ。俺たちを捕まえようと思ったら、どれだけの予備動作が必要になる? 膝を折って腰を落として、腕を伸ばす……そんな動作が一つ一つ必要だろう。
 それに大きければ、大きいほどに、そういう動きは隠せない。いや、アンティカだからこそ、そんなの無しで無理やり動かせるのかもしれないが……それでも立ってるだけでは、普通は腕は届かない。腰を落とす必要性は絶対にある。でも……そんな動きさえ、わからなかった。そもそも動作音とかもなかったぞ。しかも俺たち二人を一瞬で……もう一人の奴はダメージもあまりないはずで、俺よりは俊敏に動けたはずだ。
 なのに……

「今の動き……どうやって……」
『お前たちが知る必要はない。それよりも、貴様たちばかり質問するな。俺の質問に答えろ。あれは貴様らの仕業か?』
 
 そう言って巨大な筒の一部に映像が表示される。このアンティカさえもまるまる入れる程に巨大な筒にはそんな機能まであるのか……そしてそこに映った映像は、何やらとても不気味なものだった。黒い……黒くて触手がうねうねと生えた気味悪い何かが空中に漂ってた。

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