美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H147

「全てを使え! 出し惜しみは無しだ!」

 マスクをした声は通りづらいが、それでも誰もがあの存在に出し惜しみを使用なんて思ってはないだろう。普通の状態では全くもって、銃撃はあれには効かない。ならどうするか……あるカードを俺は銃にスライドさせた。そしてそれぞれが、このステージの四方へと散っていく。あんな化け物相手に一カ所に集ってたら、一気に殲滅させられる。そもそもがさっきまでできた筈だ。それをしなかったのは多分、本当に気まぐれみたいなもの。

 部隊の一人が真っ先に引き金を引き、風を巻き起こした。それは実際ただの風で現象として風を巻き起こした感じだ。だから勿論、攻撃力なんて物はない。ただ引き金一つで起こせる魔法……見たいなかんじだな。でも更にそれに続く様にその風に砂が混じった。

「むっ、こざかしい真似を」

 風に砂を混ぜて放つ。すると何が起きるか……地味だが、目潰しだ。防ぐことなんかアレにとっては造作も無いだろう。だが、ちょっとは喰らってる。俺達を格下だと思い込んでるから、奴は基本避けたりも防いだりもあんまりしない。自身の纏う炎で大抵どうにかなるからだ。でも砂は案外通って顔を剃らしてた。その瞬間に、俺は無謀にも奴に近寄る。そして二回、自身の胸に銃口を当てて引き金を引いた。別段何か音がするわけじゃない。カチャカチャとスカッた音がしただけ。だが……それでいい。更に別のカードを銃に読み込ませた。
 俺の接近に気付いたのか、それとも炎自体に意思か自動反撃みたいな機能があるのかはわからないが、炎だけが俺の方へと向かってくる。だが俺は怯まずに銃口を向けた。だが撃つよりも早く炎に包まれる。

「うっ――ぐぁ」

 熱い、めっちゃ熱い。だが、それも事前に自身に掛けて魔法でなんとか我慢する事が出来る位にはなってる。完全に防ぐことは出来てない。だがそれでも……俺は地面に無地のカードを押しつけた。炎によってそれが地面と同化していくようだ。

「よし」

 俺は引き金を引いて、その衝撃を利用して炎の外に出た。そもそもが攻撃の為のカードをスキャンしたんじゃない。炎からの脱出の為の準備を俺はしてた。それに全力じゃない炎なら、この最新鋭の装備なら、なんとか耐えられる。色々と焦げ付いてるが……それでもまだ死んではない。せめて、サポとアンティケイドがアルス・パレスへとたどり着くまでは……最後の一人になったとしても、ここから逃げ出す気はない。
 その気持ちを全員が持ってるだろう。なにせ、人種の国はまともになった。くそったれだった日々ではもうない。希望がある。俺達はそれこそ、高尚な事なんてないクズのあつまりだった。生きるために同胞を殺してきたんだ。やってる事はそこまで変わらなかったが、それでも人種の立場は確実に変わった。明日に希望を見て良くて、生きることが普通に出来る。その日々を守る礎とかになれるなら、沢山殺してきた俺達に取ってはいい最後だ。

 この化け物を前にしても、誰も引く気なんてない。全員が自分たちの役割をわかってる。

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