美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H142

 俺達はサポにアンティケイドを任せて囮になる道を選んだ。サポはそもそも人種じゃないし、アンティケイドは人工的な存在だ。色々な能力がある奴だから、火口からダイブって奴もきっと現実的だろう。オウラムの奴らも人種には火口から飛び込むなんて事は現実的ではなくてやるわけないという先入観があるかもしれない。俺達第666独立遊撃部隊だけに成ったのなら、いつもの様にやるだけだ。
 いや、いつもって大体は気付かれる前にやるのが俺達の部隊の特徴だから、既にいつも……なんて事は無理だな。だが、どんな状況でも不意を突くやり方はある。こっちにオウラムの目を向けさせる。サポ達がルートを外れやすい様に、俺達は煙幕を焚く。白い煙で包まれる。オウラムの奴らはさっきの罠も事もあるし、この煙にちょっとは怖じ気づく可能性だってある。まあそれは希望的観測だった訳だが。

 さっきの罠だらけの道なんてなかったかのように、煙の中に突っ込んでくる。まあ俺達にこれ以上行かれると困るとかもあるとは思う。それに単純に視界が……いやオウラムの奴らは色々な種がいるし、カバーし合えばいいのか。俺達は柱が続く通路を進みつつも、煙幕を絶え間なく炊きながら、後方に向かって銃弾を放つ。しかもそれにもカードを使って銃弾の特性を変化させて、風の刃を飛ばしてる。
 それだと、ほぼ音がしない。それに風の刃見えない。奇襲にはもってこいだ。致命傷は与えられないかもだが、厄介な事に変わりはない。でも結局、俺達の進む道も向こうがわかってるからな……見失う……なんて事はなくて、そしてそうであっても困る。なにせ俺達は囮だ。反撃も開始した事で、奴らは更にコッチに気を向ける筈だが……もしかしたら一人少ない事に気付くかもしれない。そういうのを誤魔化す為にも煙幕だ。サポは多分、元々小さいから気付かれてなかったとは思う。
 この中で離れて行くサポとアンティケイドを見送って、前に進みながら、攻撃を続ける。でも足音は確実に近付いてきてる。身体能力は普通に考えて、人種よりも他の種のほうが高い。オウラムの奴らがスピードをあげてるのは、煙幕に入ってから罠がないと気付いたからだろう。その代わりに、直接俺達が攻撃してるとわかってる。となれば、既に罠は持ち合わせはないんだと思うだろう。

 だからこそ、オウラムの奴らは前に進む力を強めてる。それに近距離線なら向こうの方が有利だという自負もきっとある。なにせ体の頑丈さも人種と他種族では全然違う。成るべく向こうは近付こうとしてくるのは必然。そして俺達は実際、追いつかれたら詰む。そしてそれをこの段階で許すわけにいかない。

 色んな感覚器官が優れてる奴らがいるんだろう。かなり近くまで追いつかれても、結局の所当たりはしない。当たったとしても、オウラムの奴らが止まる事はない。煙幕があるから距離自体は分かりにくいが、既に数メートルまで来てる。だが、追いついた――というその油断が生み出した瞬間に、用意してた罠が弾ける。爆発と共に、両側にある柱が倒れる。更に煙幕の中に毒も混ぜる。

 そして俺達は全速力でこの道を駆けて、ここで一気に距離を稼ぐ。あと少し……その油断を上手くつけたと思う。だが、実際の所、これで全ての罠の道具は使い切った。早く、この先にあるであろうアルス・パレスへと続く施設へと入らないとヤバい。なにせ真っ正面からぶつかったら、俺達は蹂躙されるだけなんだから。

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