美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H115

「来たか」

 そういうのはセーファの奴だ。別段いつもと変わらない態度。まあありがたい。オウラムの中でも中心地的な町並みを抜けて山に続く道を塞ぐ様に立ってる神殿の様な物の中へと俺達は来てる。石造りの壮大な建物。これは最初からこの山に建てられてた物だ。セーファが建てたのかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。昔はここにも人種がいて、セーファはあがめられてたらしい。
 まあそれも数百……数千年前らしいが。だからこの神殿はその当時の人種が作ったとセーファは言っていた。かなり古い建物だが、とても綺麗なのは、セーファがその力が出ここを守ってるかららしい。

「何かあったのか?」

 俺とティルは神殿の中央、一番広い祭壇の中央に集まってるこのオウラムを支える者達の所へと歩みを進める。セーファ達は祭壇の中央に、でもその更に奥に、一つ壇上があって、垂れ幕が掛かった向こうに一人いる。まあ姫だが。この山自体はセーファの領土だが、俺達はあのお姫様を担ぎ上げてるからな。一応特別扱い的な事をしてる。
 そんな姫の元へとティルはいく。一応姫付きだからな。

「森が騒がしい。一部だがな」
「敵か?」
「そうだな、ここまで来ることはないだろうが、一応斥候を出す。敵が、ちゃんとこの森の魔物共に殺されるか、それを確かめないといけない」
「逃げてきた種なら誘導が必要じゃないか?」
「これ以上足手まといを増やしてどうする? 大きな戦いはそこまで迫ってるぞ」

 セーファの奴がそう言って厳しい瞳を見てくる。確かに世界は覇権を求めてる。だから近々大きな戦いは起こるだろう。それは否応なく、世界に波及していく。ここだって無事では居られない。なにせここが無視される……なんてことはまず無いだろうからだ。

「だがもしかしたら、希望が来るかもしれない。このままだと俺達は……」
「ふん、トップが弱気でどうする。貴様はここの奴らに希望を見せる義務がある。下を向くな。そして決断しろ」

 セーファの奴は厳しい。だがただ厳しいだけの奴ではない。その厳しさの中には、芯がある。慈悲が有る奴だ。行くところもなく、故郷を失った自分達にこの場所を提供してくれた。勿論、セーファにも狙いはあった訳だが、それでも俺達が助かったのは事実で、そして多くの種のよりどころになったのもオウラムをみればわかる。

「決断はしてるさ。戦いは避けられない。だが、俺は誰も見捨てたりはしない」
「青いなラジエル」
「俺は希望を捨てたくないだけだ。こんな世界だからこそ……な」

 とりあえず森の異変は見逃せない。だから斥候の期間を待つことになる。でも俺達はまだ気付いてなかった。既に大きく、世界を揺るがそうとしてる意思がうごめいてる事に。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品