美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H74

 ハゲがなんか死にそうな顔して帰って行った。本当ならもっと色々としてもいいのに……本当に謙虚な奴だ。私の事を好きなはずなんだけどな……そして私はこの通り超スーパー魅力的だから、許されたら手を出さずにはいられない筈。

 けどあのハゲは鋼の精神力で、それをしない。実際私のプライドはハゲのせいで結構傷ついてるんですけど? なにせ私は魅了してる筈なのに手を出してこないんだからね。いや、別にやりたい訳じゃないよ。少しはねぎらってあげようかなっていう、上司的な心だよ。

「なるほど……飲み会を断る部下はこうやって嫌われて行くんだね」

 一人私はお茶を啜りながらそう呟く。まあ私は別にハゲを嫌いになったりはしない。だってハゲが私を好きなのは確実なんだ。だからこそ、なんで私を抱かないのかはよくわからなけど……けどそこは個人の自由だしね。本当なら私の魅力に抗いようなんてない筈なのに、ハゲが抗ってる事に多少のプライドは傷つくが、それだけだ。

「ん?」

 何やらクイクイとぬいぐるみの一体がやってきた。黒ウサギのぬいぐるみタキシードを着てかっこ可愛い感じにしてる。そして対の白ウサギもいる。こっちは完全にファンシー路線だ。この子達は最初はそれこそ個性なんて無かったが、改良を重ねて行き、そして服を与えた事でなんか個性を獲得していってる気がする。

 実際服は毎日変えてる。私はそんな面倒な事はしてないが、私の周囲に侍るメイド隊が彼等の世話もやってくれてる。今も実はいる。ずっといた。どうやらハゲはきづかなかったみたいだけど……彼女達はなんか自分たちで必要な物を技術省に嘆願して作らせてるみたいなんだよね。

 恐ろしい……何故にただのメイドがそこらの戦闘部隊よりも充実した装備を得てるのか謎だ。いや、彼女達の言い分は私付きは何があるかわからないからこそ、全てを想定して、そして出来うるスキルの全てを求める――なんていうとても高い意識を持ってるらしい。

 いやー部下が働き者ってこっちは楽できて良いな~って最初は思ってた。けどそれはどうやら誤算だったようだ。彼女達がなんでも完璧にやろうとするから、こっちにまでその影響がね……まあそれでも私はぐだぐだしてるが。その程度で、この楽々ポジションを簡単に明け渡すわけがない。

 私は楽がしたいが為にここにいるんだよ。まあそれもわかってはくれてるけどね。でも周囲には私を待ってる人達がいるわけで、そしてなんか知らない所で予定って奴が勝手に埋まってくというね。偉くなるのも考え物だ。でもそれでも一応彼女達は私の事を考えて、予定も埋めてるらしい。

「ここまでやれば、ご自由ですよ」

 とかいう悪魔の言葉を使ってくるのである。明確な木彫があると、まあそこまでなら……てヤル気になる。そして実際それ以上の仕事がのしかかる事はない。彼女達は私がしない仕事もかなり負担してるからね。私はまだ最低限な……筈。

 クイクイとしてきた黒ウサギのぬいぐるみが白いテーブルに映像を投影しだす。その目が光ってその光を投影してるのだ。現れてきたのはこことは違う光景。沢山の山がなんか削られた見たいに抉られてて細長くなった山が沢山有る変な場所だ。

 そしてその山々の間には中空に巨大な繭が浮かんでる。どうやらアンティケイドがようやく見つけたようだ。この星の支配者を気取ってる最強の種がいる場所を。

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