美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H72

「ごめんなさい呼び出して」
「いえ、我らはラーゼ様に呼ばれれば、どんな用事さえも押しのけて赴きます」

 私はバルコニーにいるラーゼ様に跪く。今日のラーゼ様はその毛量の多い髪を細かく編み込んで無数の三つ編みを作ってる。毛先の方から薄い紅とも言えるサクラと呼ばれる色が綺麗なグラデーションを伴ってラーゼ様の綺麗さを何倍にも増してる。細く色素が薄い髪は夜の頼りない光さえも反射してどこかキラキラして見える。

 服装は萌え袖と呼ばれるちょっと大きめな服白い服に、それを中に入れてタイトなスカートを合わせてらっしゃる。スカートの長さは太ももまでで、ラーゼ様の奇跡のような脚線美が惜しげも無く晒されてて、3センチくらいのヒールの靴はスカスカでラーゼ様の指先までも見える。

 思わずゴクリ……と唾を飲み込む。へりくだり、下から煽るように見ると、スカートの中が見えそうだ……まあそれなりに離れてるから煽るように見るにも限界があってそこまでは無理だ。だが……素晴らしい。ラーゼ様を見るだけで、私の活力はどんどん補充されていく。

「ラーゼ様ぁぁぁぁ!」

 そう言ってドレスを着た熊のぬいぐるみがラーゼ様に飛びかかった。それを嬉しそうに抱き留めるラーゼ様。かわいい。この世にこんな可愛いと思える光景があるだろうか? 今の光景を見れただけで、私は死んでも良いと思った。

「案内ご苦労様」
「おう!」
「さて、早速要件に入ろっか? そっちも忙しいでしょうし」
「こちらの事を考えて頂いて恐悦至極に存じます」
「ふふ、ハゲはいつも堅いんだよ」

 そう言ってカツカツとヒールを鳴らして近付いてくるラーゼ様。下を見てうつむいていた私にはラーゼ様の足が見えた。そしてその足が私の頬に触れてくる。甘い花の香りがした。そしてそれは頬から顎に行き、私の顔を足を使ってあげてくださる。ありがたい。

「どう? ちょっとしたご褒美になったかしら?」
「それはもう……とても」

 ラーゼ様の御御足に触れている……それだけで限界を迎えそうだ。それにやはり見上げるラーゼ様は思った以上に美しい。

「欲がないわね。ハゲは充分貢献度貯まってるわよ? もっと色々してあげるのに」
「私は欲深いですよ」
「でもそれをぶつけてこないじゃない? それで言いの?」
「私は……いえやめましょう。一体何様ですか?」

 私は自分の欲を晒すのを止めた。それは結局私の欲だからだ。私はただ、ラーゼ様の役に立てるだけで嬉しい。勿論、その体を重ね合わせたらどれだけ幸せだろうか……とは常に思う。だが、仕事は私がしたいからしてる事だ。それで私はラーゼ様を求めたりはしたくない。本当に私が欲しいのはこの方の……ラーゼ様の心だ。私だけに向けてくれるその心を生み出したい。

(ああ、なんと欲深い)

 私はそう心で思い懺悔する。

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