美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H65

 大きな世界が開けた。今までは狭い場所の狭い世界だけが全てだった。だがそれに不満があったかと言えばそうじゃない。平和なあの場所での生活はとても満足出来る物だった。仲間達と穏やかな時間。だが今自分はとてもワクワクしてる。そしてそれは他のパウジーフラワーも同じだ。我らは繋がっている。なにせ大地は繋がってるのだ。だから大地にいなくても繋がってる。何を言ってるのか分からないかも知れないが、この感覚は同じ種にしか得られない感覚だろう。

 だがワクワクだけしてる訳にもいかない。なにせあの穴の外はとても恐ろしい場所だと聞いている。今はこうやって悠々と空を飛んでいられるが、生き残り為には、色々と大変だろう。だが我らパウジーフラワーは新たな知識を手に入れている。あのままあの場であの化け物に滅ぼされる位なら……我らは新天地を目指して飛び出す。それが意思だった。ああ、丁度良い、なかなかに取り付きやすそうな生物が目に入った。


「どうします?」

 リリアの奴がそう聞いてくる。そしてその視線は全員分となって俺へと注がれる。一応この第555独立遊撃部隊を率いてるのは俺で、リリアは特別な参加者みたいな物で魔王という立場を使って無い。だから皆が見てくるのだろう。いや、実際困る。どうすると言われてもな……いや、勿論パウジーフラワーの奴らには報復が必要だ。勝手に攻めて、反撃されて被害を出し……向こうは逃げる事を選択したというのに、これは完全なる逆恨みだろう。向こうは俺達よりも一枚上手だった……それだけ。

 でもこのまま戻ると、我らは笑われるだろう。任務は失敗で、ただ単に被害を出した。しかも魔王……は対外的には参加してないことになってるが、わかってる奴はわかってる。つまりこのままだと俺達ではなく、魔王ミリアに泥を塗ることになる。それを魔族が許すだろうか? いや、そんな事はないだろう。魔族は喧嘩っ早い。いや、喧嘩ならまだ良いが、奴らは戦争っ早いのだ。これのせいで人種と敵対したら、大変な事だ。リリアを見る限り、それは流石に無いと思うが……俺はチラリとリリアを伺う。
 別段リリアは気にしてる風な感じは全くない。空を見て、何かポケーとしてる様に見える。まあリリアはそこまで気にしてないのは確かだろう。さっきも色々と得られたと言ってたしな。それてリリア的には良いのかもしれない。だがリリアを……いや、魔王という肩書きにとってはそんな汚名は相応しくないと考える輩はきっと多い。そして俺達だって……仲間をやられて、このまま逃げ帰ったのなら、後ろ指を指されるだろう。なら選択肢なんて一つしか無い。

 この広く広大な森……その全域に広がろうとしてるパウジーフラワー達。だがこのまま逃がすなんてそんなこと……許せる事ではない。何せ訴えてくるんだ。この現世を捉える事が出来なくなった片目に死んでいった仲間達が……

「行くぞ。地の果てまで追っていき、パウジーフラワーを殲滅する!!」

 それが俺の決定だ。

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