美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H59

「ここを吹き飛ばして良いなら、奴らの仕掛け事潰せると思いまーす!」
「それは止めてくれ! せめて避難するまでは!!」
「はーい」

 リリアの声はとても気楽な物だ。俺達が相手してるパウジーフラワーなんかよりも何倍も巨大な奴を相手しながらも、リリアに緊迫感は全くない。まあけど、それもそうだろう。なにせリリアは魔王でクリスタルウッドへと繋がってる。それはラーゼ様と同じように、マナに制限がないみたいな物だ。どんな上位の種にも限界って奴はある――らしい。らしいって言うのは人種とは違いすぎて上位種のマナの量も底なしに感じるからだ。

 地上を這うくらいの俺達にはそれを感じる事も比べることも正確には出来ない。それくらい隔絶してる。でも実際にはどんなにとんでもない力を持った上位種でも力のマナには上限があるらしい。だが、リリアやラーゼ様にはそれがない。クリスタルウッドから無尽蔵にマナを引き出せるからだ。ようは二人は行ってしまえばこの世界のマナが尽きるまで戦う事が出来るって事だ。勿論それは極論であって本当にそれが出来る訳では無い。

 ラーゼ様があんまり戦場に立たないのは、似合わないからや、立場って奴もあるが、ラーゼ様の体がその力に耐えられないからって説がある。それは納得出来る理由だろう。強大な力を振るうには、ラーゼ様の体は華奢すぎる。でもそれを言うなら、リリアもそうではある。別にリリアは魔王だからって殆ど人種と見た目は変わらない。戦う事で興奮すると、ちょっとずつ人種から離れた見た目になっていくが、それでも人外になる事は無いらしい。

 腕は細いし、筋肉があるようには見えない。まあ魔族の体は人種とは違うから同じように見えてもそのつくりは多分根本から違うから、リリアは長く戦えるんだろう。リリアが言うようにここ――この場所になにか有るのなら、ここを潰すことでパウジーフラワーをどうにか出来る可能性はある。だが、ここの出入り口は今の所天蓋しかないわけで……そうなると今それをやられると俺達まで生き埋めだ。それは困る。

 俺はこの第555遊撃独立部隊のボスだ。俺には一応、奴らを率いることが求められる。そして俺達は全員人種の戦力……裏側のだが。だからそれは人種の国の財産だから、無駄に散らすなんて事はあってはならない。戦闘で兵が死ぬのはどうしようもない。それは損失として数えられるだろう。でも無駄死になんて出すと俺の評価が落ちる。それにこの部隊の奴らは碌でもない奴らばかりだが、仲間なのはかわりない。みすみす死なせるなんてできない。パウジーフラワーの連中と一緒に心中なんて気は無いんだ。

「でもどうする? このままこいつも相手してても、状況は好転しないですよ? そっちかなり危険です。私には影響ないですけど、肌からも奴らの花粉浸透してるみたいですよ。あまり長くその花粉の中に居ること自体が危険みたい」
「そうなのか?」
「マナを感じる限りはあああああ!!」

 ドガン! という音と衝撃がリリアを絡め取ろうとしてたデカいパウジーフラワーの怪物を吹き飛ばした。あいつはマジで何の心配も無いな。寧ろ自分たちだ。この中にいるだけでリスクがあるのは不味い。マスクでどうにかなってると思ったが、どうやらそうじゃないらしい。とりあえずリリアがあれを倒しまくってくれれば……

『今や、この花粉はここにある全ての花が出してますよ?』
「何だって!?」

 サポがなんかとんでもないことを伝えてきた。

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