美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H45

 ダンプを置いて、俺達は森の中を進んでる。鳥の声も動物のいななきもない森の中。不気味である。風によって木々の葉が擦れるような音は聞こえるが……それだけだ。本当にこの森の生物は昨日の戦いでどっかに行ってしまったのだろうか? だからってこれは……大移動ってレベルではない気がする。安全になったと分かったのなら、ちょっとずつでも戻ってくるはずだし、俺達はさらなる森の中に入ってるわけだから、他の生物が逃げたはずの方向に進んでるはずだ。これで何にも出会わないっておかしい。

 これが全て自分たちのせいだなんて思えないが……

「なんだ……これ?」

 そろそろ目的地が見えてきそうなその時だった。急にかぐわしいというか、花くさい匂いが鼻をついてきた。女や子供ならこう言う匂いも好きなんだろうけど……むさ苦しい男共には不評である。今まで匂いらしい匂いなんて無かった。なのに行き成りこれって……変化を感じる。

「サポ……何か感じるか?」
『マナの歓喜を感じます」

 歓喜? 喜んでるって事か? どういう事なんだ? 俺はリリアの方を向く。するとリリアと目が合った。童貞なら思わず目をそらして赤くなるシチュエーションだろうが、俺は童貞ではないからそんな反応はしない。リリアは頷いた。ならこのまま進んでも危険ではないんだろう。それにサポも歓喜してるって行ってるし、それで危ない事は無いとおもう。だが、既にここは敵地なんだ。警戒は厳に進む。するとグラブの奴が「うわっ!?」と何やら声を出した。すると直ぐにボールが「花が……」とか呟いた。

 花? ここは森の中だ。花なんて別に珍しくはない。珍しくないはずだが……俺も気付いた。なんでグラブの奴が驚いたのか……

「これは……まさか……」
「凄いですね」

 そう言ってタタッとリリアがその中に走った。それはとても絵になる光景だ。何せリリアは絶世と言える美少女だ。この世界で彼女と並ぶのはラーゼ様だけ。だからこそ、花は誰よりも似合う。やっぱり彼女も女の子なんだろう。根底では。魔王となってとてつもない物を背負ってしまってるが、ああしてるとただの少女……いや、流石にただの少女には見えない。地上に降りて来た天使が花たちと戯れてるように見える。つまりはとても絵になる。

 こんな異常な光景なのに……だ。彼女がそこに入ると、受け入れられる。美少女って奴にはそれだけの力がある。不条理を条理に組み込むようなそんな力だ。今俺達の光景はおかしい。花が咲いてるのはそんなに異常な事ではないだろう。でも……これは確かに異常だった。なにせ花が地面に咲いてるだけじゃない。地面にも勿論咲いてる。それも一面だ。視界全てに花が咲いてる。そして、なんと木の幹にも花が咲いてた。

 こんな光景見たことない。地面という平面だけじゃない。高さにまで花が咲き誇ってるんだ。

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