美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H44

 俺達は目的を思い出してダンプを進めようとしてたが、なんか今朝からダンプの機嫌が悪い。まあ前日にめっちゃ無茶したからな。一応機械に詳しい奴も居るから、そいつが見てくれてるが……最悪、直ぐには進めないかも知れない。いや、こうなったら二手に分かれるか。幸いして、前日の出来事のせいで、この森のここら辺はかなり安全になってる。動物一匹、鳥一羽さえもいないくらいに。
 戦力的には、リリアもいて魔族が二人、そして助っ人のバンセンさんとサポ。十分別れても戦力的には問題が無いと思える。朝にリリアが怪鳥を狩ってきた時に目的地を見つけたらしいが、それによるとそんなに離れてはないそうだ。歩いて行けば、一時間くらい。なら、部隊を分けて帰りに備えてダンプを治しておいた方が……任務が終わっても、このままではこの森から出られないからな。

「よし、部隊を分けるぞ。それでいいか?」
「別に私に聞く必要は無いですよ? 私はリリアですから」

 あくまでリリアはリリアって事で行くらしい。魔王ミリアがここにいるのはあくまで内緒って事だ。さて、そうなるとメンバーだが……リリアは確定だろう。なにせこいつ、この任務についてくるために来たんだし、聞く必要は無いって言っても、外すのは違うって俺でも分かる。そしてそうなると魔族の二人もついてくるんでは? でも実際、リリアが来てくれるのなら、魔族二人には守りに残っていて欲しいって思いがある。
 確かに今はこの森はとても安全だ。だが、それは表面上だろう。森というのは、基本危険な物だ。そしてそう言う危険って奴は、油断したときに襲ってくる。それに今安全なのは、リリアがいるから……って栓も抜けきれない。

 魔王がいたら手を出せないってのはある得る。でもこれが人種だけに成ったら? バンセンさんとサポはラーゼ様からこの任務の為にと派遣されてきたんだ。連れて行かないなんて選択肢はそもそも無い。そうなると、人種だけがここに残ることになる。全員柔な奴らじゃないが、昨日の戦闘でかなり道具は消費してる。あの規模で襲われるなんて事は流石に無いと思うが……それでも最悪を想定して動かないといけないだろう。

 そうなると、残せるのは魔族の二人って事に成る。とういうか、その二人しかいない。単純な戦闘力って事ではこれ以上頼もしい人材もいないわけだしな……ここは俺が言うべきだろう。

「あと……魔族の二人にはここに残って貰いたい」
「「断る」」

 速い! 即答か!! いや、分かってたけど。だって彼等は魔王に付き添ってきてる。絶対にリリアと一緒に行くって言うだろう。けど、そもそも考えて見て欲しい。リリアにそんな付き添いなんて無駄じゃないだろうか? だってリリアの方が二人よりも強いのは確実だしな。でもそれを直接言ったら、きっと怒るだろう。ならここは……

「守りがこのままでは手薄になるんだ。こっちはリリアだけでも過剰戦力みたいなもの……そうだろう?」

 俺は魔族の二人ではなく、リリアに向かってそう言う。だってこの二人を説得する必要性は特にない。リリアに納得して貰えば良いのだ。

「そうですね」
「「まっ――リリア様!!」」

 上手くいった。これで守りの方も憂い無いだろう。俺達はようやく当初の任務に取りかかることになった。

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