美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H22

「よかったんすかボス?」
「そうっすよ俺達の任務は基本極秘なんじゃ?」

 そういうのはグラブとボールの二人だ。まあ確かに二人の言うことは正しい。正しいが――

「じゃあ何だ? お前達にはあの状況で隠し続けることが出来たと?」

 ――そういうことだ。ああなってしまってはな。確かに俺達は情報を渡すくらいなら死んだ方が良いときもある。そういう命令だってあるからな。だが今回はそんなことはなかった。『死ね』と言う命令はなかった。俺はこの角がある事でそういうことが外部からも出来るのかも……とか睨んでる。角が着いた時……何か繋がり? とかが出来た気がするんだ。この角は俺を強化してくれて便利だが、それだけじゃない気がする。いい話には裏があるって奴だ。まあそもそもこの角については何も聞いて無いし勝手にこうなったんだが……だが俺はまだ死んではない。
 この角は俺の頭に直結してる。もしも外部から殺そうと思えば簡単なはずだ。それこそ角から内部に向かってトゲが出たりするだけで俺の脳はこわされるだろう。それかマナを送り込むとか。この角は折れにマナの恩恵を与えてくれてる。だが人種にとってはマナはただの力ではない。そのままなんて使えない。それにマナに対する耐性が一番低いのも人種だ。角から強制的にマナを送り込むとかされると死ねるだろうし、そもそもが少ない人種の魔力をこの角が強制的に排出なんかしたら……簡単に俺は死ねる。つまり俺の命は外部の誰かに握られてる。

「大丈夫、魔族の動きも想定内だ。俺はまだ生きてるからな」
「ボス、それは一体?」
「これが俺を殺してないからな」

 そう言って俺は角をトントンと叩く。それを見て二人は察する。いや、二人だけじゃない部隊の奴らは俺が命握られてると気付いただろう。そしてその意味も……こいつらは全員薄ら暗い仕事をしてきた奴だ。全員が自分たちの扱いって奴をわかってる。

「まあそれに、あの場で逆らっても意味は無かっただろう。なにせあれは多分魔王……そうですよね?」

 俺は部隊の前で先導してる二人の魔族にそう聞くよ。二人は黒い肌に細長い羽を持ってる。そして目は一つ。口はなんか細長く常にキスを狙ってる感じだ。服装は上下一体のオーバーオールを二人とも着てる。

「「その通り、あれこそ我らを導く……いや世界を再び想像しうる魔王様だ」」

 二人は同じ事を全く同じように言った。なんか兄弟か何かなのだろうか? 見た目的には二人は似てる。違いは羽の色だ。赤と青それだけ。そしてその声は震えていて甲高い。はっきり言ってちょっと耳障りな感じだが、そんなことは言えない。でもやはりアレは魔王……圧倒的な存在感に納得出来る。俺は二人の背中を注視しながら……もっと踏み込んで良いのか考える。何せただ情報を与えただけでは俺の矜持が許さないからな。だがその線は曖昧だ。

 この二人は味方なのか……なかなかそうは思えないからな。

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