美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H15

「おいおい、ここには部外者は立ち入り禁止だぜ」

 そう言って何もなかったところから色がつく様に沢山の魔族が表れてきた。その数ざっと二十くらい。だが、透明になってたのを見るに、これで全部だと考えるのは浅はかだろう。まだ潜んでると思っておくべきだ。それに潜んでるのはこいつらだけではない。

 俺達の部隊そのものに気づいてるのか、それとも俺達にしか気づいてないかの……やりあうのはそれを確かめてからでもいいだろう。

「そうなんですか? ちょっとわかりにくくて、すみませんね。それはそうと、皆さんは一体? いきなり出てきたように見えましたが?」

 ここは必殺、迷った観光客を装う! だ。魔王国にだって人種や別の種はいる。まあ魔王国の場合は特定の種をなんか奴隷みたいに扱ってるらしいが……そこらへんは共存というか、共生を掲げてるうちらの国とは違う。だからこそ、この魔王国にいる間は、人種以外はちゃんとした認識票なるものが必要だ。もちろん、それはバイセンさんもサポも持ってたはずだ。
 なにせここを通るのはわかってたんだから、持ってない筈がない。それでも誘拐されるなんて……間抜けだとは思うが、起こった事はしょうがない。とりあえず観光客っぽくヘラヘラして腰も低くして対話を試みる。

「ふん、変な芝居をしてるんじゃねーよ。その武装でただの観光客なんて通じるとおもってんのか?」
「…………バレたか」

 とりあえず俺はヤレヤレ感をだして肩をすくめてみせた。バレたんならしょうがない――的な? そんな雰囲気って大事じゃん。別に俺は自分の格好が普通じゃないって事を忘れてた訳じゃない。そんなアホではない。ただ今の格好が気に入ってるから、自然にしてただけだ。

「バレたかじゃねえーよ! バレバレなんだよ!!」
「それじゃあ、直接聞いてやる。貴様らの目的はなんだ? 俺達の事を知っててちょっかいを掛けてきた。そういう事で良いんだよな?」
「はっ、弱い人種がいきがってんじゃねーぞ!!」

 そう言って魔族がこちらに突撃してくる。けどそれは半数の十人くくらいだ。残りの半数は空を飛んだり、後ろに下がったりと案外慎重。

(こいつら……チンピラじゃない?)

 いやそもそも魔族にそんなのがいるのかわからない。なにせあふれてるほどに数がいる訳じゃないだろう。人種は特別に数が多いから、管理の外にあぶれる者たちがどうしても出てくる。だが、普通の種はそんなに遠くはない。だから魔王がこの者たちを見落としてるなんてことはないんではないか? 

「どうするかね? 流石にこの数はきついのでは? それに魔族とこのタイミングでもめていいのか?」
「そうですね」

 バイセンさんの言う事はもっともだ。だが……奴らは全てをわかったうえでこっちにちょっかいを出してる感じだ。それに向こうも本格的にこちらともめたいわけはない。何か目的がある筈。

「とりあえず目的はサポの救出です。それを最優先で行こう」
「了解した」

 俺は服のポッケから手のひらに収まる立方体をだしてその天辺を押した。そしてそれを自分たちと魔族の間に投げる。すると次の瞬間、激しい音と閃光が周囲を埋め尽くした。

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