美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H9

 四角い箱に触れた瞬間、その四角に亀裂というか、そんなのが表面に走った様にみえた。そして俺の第六感いや、悪魔の感覚が冴え渡った。

「全員伏せろ!!」
「「「ボス!!」」

 部下達の声が聞こえる。皆どうやら俺のことを心配してくれてるようだ。俺達は内外問わず敵が多い。たからこそ内側……この第555独立遊撃部隊の中だけでは強固な信頼関係が出来ている。寧ろここに入ってない奴は全員敵――と思ってる者も少なくないだろう。そんな奴らだからこそ、まあこんな俺でも隊長なんて馬鹿げた事をやってる訳だ。

 むさっ苦しい奴らだが……可愛いこと言ってくれるじゃねーか!!

「安心しろ! 俺は……こんな所じゃ死なねーよ!! だがな、それでもやらせろ!」

 そう言って俺は周囲の仲間が柱の陰で身を屈める中、一人だけ腕を大きく広げて、その光を一身に受ける。

「「「「ボスウウウウウウウ!!」」」」

 泣いてんじゃねーよ。これからがデカい仕事だろうが。俺はお前達が確実に俺の仇を取ってくれるって信じてるからここで散れるんだぞ!! 

「てめーら、後は任せたぞ」
「「「「っ――――!?」」」」

 全員が鼻の頭がツーンとしてるようだ。声になってない。てめえら……そんなに涙もろかったのかよ。まったく仕方ねえ奴らだ。そうしてどんどんと強くなる光の中で俺は最後に一言――

「あばよ」

――と言った。けど次の瞬間、その光は拡散していく。そして、俺達の着崩していた軍服が替わっていた。

「な……に?」

 俺は自分の体に纏わされた物に手を触れる。

「ボス、これは一体?」
「動くなてめえ等!! これは……もしかしたら、ヘタに脱ごうとしたら体事ぶっ壊す……そういう類いの物かもしれないぞ」
「「「なっ!?」」」

 俺の言葉に何人かの奴らがそんな声を漏らす。後何人かは「いや、これが支給される装備なんじゃ?」とか言ってるが、そう考えるのは早計すぎる。おいおい、そんなんじゃこの世界生きてけないぞ。確かに今は英雄様と、そしてエデンを統べるラーゼ様のおかげでかなり住みやすくなった。

 だが……この世界の本質は何も代わっちゃいない。そうこの世界は闘争こそが本質だ。この大きな星で誰が一番かを決めようとしてるんだ。そこに弱者の居場所はない。それを俺達はイヤというほどに知ってるはずだ。

「ん?」

 服をベタベタと触ってると何やら軽い感触のポッケがあった。この服は光沢のある藍色で、柔軟のある素材で全身を包み、関節部分は堅い補強がされている。そして何やら顎の浅い位置から頭部の半分くらいをおおう様にもなってて、それがちょっと窮屈に感じる。

「全員、左胸の三番目だ。なにかあるか?」
「俺は何も……」
「こちらも同様です」
「同じく」

 そうやって報告を聞く限り、どうやらこれは俺だけみたいだ。俺は意を決してそれを取り出した。それは紙切れで、開くと『第555独立遊撃部隊に装備を支給する』と書かれてた。とりあえずそれは握りつぶして、証拠は隠滅しておく。

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