美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

閑話 ある日のシシの日常4

「全く、何をしてるんだ」
「ごめんなさい」

 私は素直に謝る。こうなったら素直な所を見せて置く方がきっと印象的にいいだろう。謝りながらも、私は見えないところで舌を出してる。本当は見つからずにつけ回したかったんだけど……そこは流石に英雄様だったよ。素人の尾行なんて一瞬でカンパされた。

 廊下の角を曲がったから急いで追いかけて行くと、待ち伏せされてて、逃げられないように腕をひねられて壁に押しつけられた。今でも腕がちょっと痛い。あれは本気で怖かった。だってドスきいた声出すんだもん。

「それで君はプリムローズのシシだろう? さっき何かもめてた様だが、私をつけてどうする気だ?」
「バレてしまっては仕方ないですね」

 このままこの人にコラン達の前に突き出されたら格好悪い。それに今はコラン信者になってしまった後輩達も居るわけで……私がこのままこの人に突き出されたら、私の評価は更に下がるだろう。そうなると……なんかむかつく。きっと舐められるよ。
 だからここは私の目的を達する為に媚びを売る!

「実はこれもお仕事だったのです」
「尾行がか?」
「そこは違います。クリエイトさんにはちゃんと出演して頂けたらそれが一番ですけど、どうせなら自然体な姿を撮れないかと思いまして、尾行しました」
「白状すれば許されると思ってないか?」
「だ、大丈夫です。英雄であるクリエイトさんのイメージを壊す部分は後でカットしとく気でした! 本当です!」

 嘘だけど。スクープとして取り扱う気満々だった。けど流石の英雄様も他人の心の仲間ではわからないでしょう。

「本当かな?」

 疑いの目で見られる。ここはアイドルの伝家の宝刀を抜く時だ! 私は瞳を潤ませて上目遣いでいうよ。

「本当です。信じてください!」
「うっ……わ、わかった」

 私の可愛い仕草に思わずそう言ってくれた。ふふ、計画通り。

「あまり勝手に撮るとかはしない方がいい。私でなくても、良い気分はしないだろうしな」
「はい、反省しております。では、撮っていいですか?」
「案外逞しいな」
「アイドルですから」
「アイドルってそうなのか?」
「そういう物です。クリエイトさんは戦場で戦ってるんでしょうが、私達だって戦ってるんです」
「なるほど……知らなかった」

 適当に言ってるだけだけど納得してくれた。この人チョロいな。私は心の中でニヤリとした。

「私達はアイドルとして沢山の人たちの関心の的になってます。けど、そんな私達と双璧をなすのが、今やアナタです! クリエイト・クーシャネルラさんといえば、新たに誕生した英雄! それは新たな歴史の一ページに名を刻んだ人物と言うことです!」
「お、おいおい」

 顔が緩んでるクリエイトさん。まだまだいくよ!

「けど軍人であるクリエイトさんを知ることは民の皆さんはなかなか出来ません。そんなの可哀想じゃないですか! 私は皆さんに伝えたいだけです。英雄の姿を……ダメですか?」
「よかろう」

 あっさり許可が出た。

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