美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

R8

 私は自室のベッドの上で天井を見上げてた。この世界が元いた私の世界かは正直わからない。けどだからってここに居る家族は、私の家族だとしか思えない。だって思い出は共有してるし、やっばりずっと会いたいと思ってた家族に変わりはなかったからだ。

 私はこてんと首を横に倒して、カーテンをみる。別段、揺れてたりはしない。なんだろう……実は私は、この世界にも私の様な人は実はそれなりにいて、そういう人たちが接触を秘密裏に図ってくるんじゃないかって思ってた。

 その人達は異世界の力を持って帰ってきてて、違うコミュニティとか築いててさ、実は裏で世界を操ってて、私を仲間に引き入れるか、それか消すか……みたいな展開を予想してた。てか、そういうのを、ラーゼと共に色々と考えてた。
 あいつは――

『私は間違いなく唯一無二の特別だけどあんたはそこまでじゃないからね』

 ――とか失礼な事を言ってた。私だって特別だったよ。私が時の人になって何がなんだか、家族はわかってなかった。けど、全てを聞いた時、お父さんもお母さんも泣いて私を抱きしめてくれたよ。確かに私は世界から見たら、そんな特別ではないかもしれない。ありふれた一人の人間でしかない。
 でもやっぱり家族からしたら、私はかけがえのない娘なのだ。それを思い知った。最近、実はここは私の世界ではないのかも……とかなやんだけど、ここの家族を置いて本当(かもしれない)世界を夢想したってしょうがない。

 そしてやっぱりここは別段何の魔法とかもない世界らしい。ラーゼと共に考えた対策とかなんかは無駄になりそう。そもそも考えれば世界に異世界の影響なんて殆ど持ち込めないのだ。なにせマナ違うんだから。そしてマナは染まる物。
 異世界の力をずっと保ち続ける事はできない。この世界にだって、私と同じように異世界にいって戻ってきた人たちはいるかもしれない。その可能性はゼロではないが、きっと皆さんその力を失ってしまってる。だから私達が妄想した裏で世界を牛耳ってる異世界経験集団なんてのは本当にただの妄想なんだろう。
 そして私も次第に向こうでの事を忘れていく。私がもたらした事で、世界はそっち方面の研究も盛んになった。だからもしかしたら……そう、もしかしたら将来。

 誰かが異世界へ行く方法を見つけるかもしれない。それは十年後か、はたまた百年後かわからない。けどいつかそんな日が来たとき、私にも残して起きたい事があると思った。そのとき、私は居ないかも知れないし、私はちゃんとこの世界で良かったと伝える事が出来る手段を考えた。
 そして私自身が忘れてしまったときの為にも……きっと役立つ物。私はスマホでメモ帳を開いた。そこにポツポツと文章を入力してく。

「うーん、まずは私が一番に伝えたい事を書こうかな?」

 だから私はこう書いた。

『私はこの世界が好きです』

 異世界にいって、還ってきて、でも本当の私の世界かはわからない。でも、私の家族がいて、私の生きた証はちゃんとある。ならやっぱりここは……いや、ここも私の世界なんだ。私はそれを受け入れて、そして異世界での経験も全部糧と、お金に換えて、逞しくいきるのだ。

 私は命の軽さをしって、そして重さをしった。無駄な時間なんてないと、きっと誰よりもわかって。だから全てを使って幸せになる。異世界の経験だってそう。そして勿論努力もね。何も無駄じゃないと、意味があったんだと証明する為にも私はここで幸せにならなければならない。

「私もこっちで頑張るよ」

 そう私はカーテンを開けて見える夜空に呟いた。
 

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