美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

R4

「それでは今日も採血しますね」
「はい」

 私は素直に腕を出す。

(別に緑色とかになってるわけじゃないのに……)

 そう思うが、異世界に行ってた私の体はとても興味深い研究対象の様だ。事実、最初の検査の時は、地球にない菌とか発見されたらしい。だから私は毎日の様に身体検査を受ける羽目になった。流石に毎日はやり過ぎでは? と思ったけど……簡単な検査を受けるだけで大金くれるって言うから……

 一回の身体検査で私には多額の金額が専用口座に振り込まれてる。額は明言しないが、だいたい平均的なサラリーマンの一ヶ月の収入が一回の身体検査で振り込まれる。一ヶ月分ではない一回ごとが味噌である。毎日私は身体検査を受けてる。
 ということは、一ヶ月でそこらのお父さんの平均年収に届く。まあ実際はボーナスとかあるから、一概にはいえないけど、高校生の稼ぎ分でいうなら破格である。まあ体を売ってるみたいでいい気はしないけど。ちょっとした検査だけだから三十分もあればおわる。
 後は異世界の事を伝える……って言うのもやってる。テレビの方では曖昧に答えるしかしてないが、こっちでは色々な学者さんとかに私が見てきた異世界を伝えるのである。最初はどうしようかな? とか思ったが、別に伝えた所で何が出来るわけもない。というわけで伝える事にした。

 私の話を興味深く聞く人は多いけど、その人達は異世界への行き方を研究してるんだろうか? わからない。私はただここに来た学者さんの質問に答えるだけ。まあ勿論こっちでもお金貰ってるけどね。情報というのは金なんだよ。
 それが誰も知らない事ならなおさらである。異世界の話なんてのは、普通なら笑って一蹴されるような話だ。それをいい年したおじさんとかおばさんがとても興味深く聞くんだから面白い。証拠と言うのは強い物だ。本当なら異世界の事なんか自分の胸にとどめておいて、静かに薄れ行く記憶を惜しんで、それでもこっちに馴染んで行くんだろうなって思ってた。
 けど今や、私は異世界を喧伝してるんだから何が起こるかわからない。

「いや~流石に実体験だと言葉の厚みが違いますね」
「素晴らしいよ」
「異世界の技術、それに魔法、何故にこの世界にないのか……ただの世界の違いなのか……」

 私は話は集まった人たちに講演形式で聞いて貰った。なんでここまで大々的に……と思うが、応募者が殺到してるからしょうがない。それにお金も貰ってるからね。その分の働きくらいするよ。研究所を後にしたら今度はテレビ局にいく。今や私は芸能人……そんな私に新たな話が番組の中でサプライズで発表された。

「なんと小清水亜子さん主演の映画が決定しました!!」

 とかなんとか。うーん、それって日本の邦画って事だよね? スタジオでは芸人が大袈裟にリアクションしたりしてる。そして拍手も出演者がしてくれてる。けどそんなの聞いてない。私は案外喜んでない。冷静だ。私は異世界で様々な事を経験した。
 命のやりとりだってした。だからかな……とても度胸がついたと思う。だから私は考えて素直にこういった。

「すみません、その企画はちょっと考えさせてください。聞いてませんので」

 その瞬間、スタジオの空気が凍り付いたのはいうまでもない。けどネットは盛り上がってたらしい。

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