美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω203

「ユング……」

 手の中のユングはすやすやと眠ってる。どうやらちゃんと生きてるみたい。ゼロでその体をスキャンしたが、ちゃんと実態とかあって、幻とかではないようだ。

「クリエイト、ユングは?」
「大丈夫、無事です」

 私は近付いてきたファーストにも見える様にする。そして近くまできたファーストのハッチが開いてそこからカタヤ様が出てくる。今来てるスーツは一応、宇宙様に開発されてたものだ。それを無理矢理持ってきて着させられた。私が着てるのなら、当然カタヤ様達だって着てる。
 コクピットの中では頭に被る部分はとってるが、外に出るときはちゃんと被って酸素とかを供給できる様になってる。だからカタヤ様の表情とかはこっちからはわからない……けどきっと安心してる筈だ。ゼロの手に乗ってきたカタヤ様はユングの常態を確かめて、用意してた毛布でユングを包む。
 アンティカでは長期的な作戦をやることもある。そういうときの為に、一応色々と積んである。それが役にたった。流石に裸のままではユングも恥ずかしいだろう。
 いくら子供でまだまだちっさかったとしても、私にも色々と曝け出したとか気の毒だからね。ユングの為にも私は何も見てないって体で行ってあげよう。

 カタヤ様はユングを背に抱えてファーストの方へと戻ろうとする。けどその時、周囲に異変が起きる。具体的には、なんか背景がやばい色に次々と変わってく。黒かった宇宙から、白いこの場所にきた訳だけど、次は極彩色? 

「逃げるぞ。その人種を切り離した影響でアラガタにはマナを制御する術がなくなった。このままではため込んだマナが一気に爆発するぞ」
「それって……」

 確かそんな現象、私たちの星でもあった。確か原因はラーゼ様だったけど、その時は確か地形がまるごと変わったんだよね。そのときよりきっと今回は比べものにならない規模になる。なにせ星を破壊できる程のマナをアラガタは取り込んだ。

 それが爆発すれば、一番被害を被るのは私たちの星では? 一緒に消えてなくなるんじゃないの? 

「どうにか止めないと!!」
「無理だ。我らに出来る事は何もない。力の規模が大きすぎる。ラーゼとやらにどうにかして貰うしかない。その為にも一刻も早く脱出だ」

 くっ……カンガタがそこまで断定するんならそうなんだろう。もしも核みたい物があれば、それを捨て身で壊してでも……とか思ってたが、つごうよくそんな特定の物はないらしい。それはそうだよね。だってそんなのって止めてくださいっていってるような物だ。

 捨て身の自爆してるのに、そんな手段なんて残す方がおかしい。きっとラーゼ様ならどうにかしてくれる。私たちは役目を果たした。ユングをアラガタから切り離した。それがラーゼ様の望み。なら後はやってくれる筈。そう信じるしかない。

 カタヤ様もユングと共にファーストへと乗り込んだ。一刻も早い脱出を――

『待ってください』
「何ゼロ?」

 エネルギーを全部推進力にしようとした所で、ゼロが待ったをかける。今は一刻を争うときなんだけど!?

『アラガタとは違う反応があります』
「え?」

 信じられない。ここにアラガタと私たち以外居るわけ……

『どうしたクリエイト?』
「いそげ!!」

 先に行ってた二人も止まってこっちを向く。どうする? とは思ったが、迷ったのは一瞬だった。

「二人は先に行ってください。私も直ぐに追いつきます!!」
『おい、どこに行くクリエイト!』
「ちっ、急ぐぞ。直ぐにおいつけ!!」

 カンガタがそんな事をいうようになるなんてね。車長さんと一つになって彼にちょっと引っ張られてる? わからないが、ちょっとクスッとなった。これでもしも間に合わなかったら散々だ。けど、この判断は私がしたこと。後悔はない。

 二人と別れて少しすると、その反応の元が見えてきた。この空間にふわふわと漂うそれに私は見覚えがあった。

「あれは……スナフスキンの星の巫女?」

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