美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω199

「ユン――」
「ぐああああああああああああああああ!?」

 一番ユングに近づいてたファーストが攻撃を受けたのか後方に飛ばされる。私は飛んでくファーストの体に鞭を巻き付けて遠ざかるのを防ぐ。その時カンガタに怒鳴られた。

「奴から目を離すな!!」
「きゃああああああああああああ!?」

 伝わってきた衝撃。一緒にファーストと飛ぶ羽目になった。まさかあそこから攻撃が届くとは……確かにユングの外側に出来上がったアンティカみたいなのは大きいが……それでもここまで届くとは思わなかった。

「終わらせる。獣になってまで力を求める貴様を、力以外に何も求めなかった貴様を、我は認めはしない!!」

 カンガタがそう言ってユングの攻撃を引き受けてくれてる。でもあれは既にユングなのか……ユングの動きに連動する様に側のアンティカも動いてる。私たちのアンティカと操縦方法が違うだけで、あれも似たようなものなのかも? 
 流石に操縦者をああも堂々と晒すのはどうかと思うけど……でもあれってある意味、こっち的にはありがたい事だ。

「カタヤ様、あれってユングをあそこから切り離せれば……」
「ああ、まだユングを助ける可能性は残ってる」

 どうやらカタヤ様も私と同じ考えの様だ。そもそもユングがカンガタの中にいる車長さんの役割をここで担ってるとしたら、ユングを助けないとアラガタを止める事は出来ない。ユングという存在を中継する事によって、アラガタは別の世界のマナに耐えてるんだ。

「いくぞ!」
「はい!!」

 私たちは再びユングの近くへと飛ぶ。カンガタとユングの攻防に上手く入り込む。まあ私は少し離れて鞭で妨害したりアシストしたりに注力するが、カタヤ様は一気に背後に回って斬りかかる。

「ユング! 直ぐに助けてやる!!」

 ユングに届く様にスピーカー常態にしてカタヤ様は語りかける。けどその攻撃はユング自身によって止められてた。側じゃない、ユングの手がファーストの剣を受け止めてる。あの剣って超振動に多大なエネルギーを内包した代物だった筈で、そう簡単に受け止められるものじゃない。
 確かに今のユングはアラガタやカンガタと同じような装甲の鎧を身に纏ってる。それに体も成長してるのか、私が知ってるユングの顔よりも精悍になってる気がする。少年だったユングが青年と言って良い感じになってる。

「貴方は……英雄でしょう……なら人種の為に……僕を殺してください!」

 ファーストの剣を受け止めたユングがそう涙ながらに叫ぶ。あくまでカタヤ様はユングが傷つかない様に、ユングと側の機械の連結部分とでも言うべき場所を狙ってた。けどそんなのではダメだと、ユングは叫んでる。でもそれに対して、カタヤ様は叫んだ。

「ふっざける!! 俺は家族を見捨てる様な英雄じゃないんだよ!!」

 

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