美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω196

 アラガタにカンガタがのみこれてる様に見える。アラガタの堅い装甲が波打っていて、そうなるはずがないのに、そうなってしまっていて私たちはズプンとアラガタの中へと入り込んだ。アラガタの装甲をこんな風に破れるとは……こんな風に無効化できるんなら先の戦闘の時にでもやってほしかった。

 まあ色々と理由があるんだろうけど……そもそも先の戦闘の時はアラガタがこんな風に棒立ちの時なんてなかったしね。それなりに、いや数十秒くらいだけど、それでも実際はそんなにも戦闘で立ち止まってる時なんてない。ちょっと距離を開けて撃ち合うとかならあるが、私たちがやってたのは中・近接戦だ。そんな暇はなかった。

「これって……」

 アラガタの中は想像と違ってた。いや、何を想像してたと言われると困るんだけど……とにかく、その中は暗かった。さっきまで宇宙と変わらないような空間だ。けど違うのはその光の様。宇宙空間で光る物と言えば、それは星の光だろう。

 星は輝いてる。けどここは宇宙のようでそうじゃない。だから星があるわけじゃない。なら……何が輝いてるのか……それはどうやら、アラガタの記憶。その断片とも思われる物がそこら中に漂ってた。

「どういうこと?」
「奴は全てを犠牲にしてるんだろう」

 そうカンガタが言う。その声はちょっとだけ辛そうというか……なんかそんな感じがした。

「全て?」
「アラガタは確かに強い。だが、今や星と運命を共にする命だ。星に命が根付かなかったときから、末路は決まっていたんだ。星が消える時が奴の終わるとき。だがそんな事を素直に受け入れる程に殊勝な奴じゃない」

 まあそれはそうだろう。散々こっちに迷惑掛けてるしね。

「奴はどこまでも力を求める。奴は何よりも戦いが好きだからな。あいつは三度の飯よりも戦いが好きな奴だ」

 戦闘狂過ぎる。三度の飯よりって……まあ私もアンティカの事になるとご飯を忘れたりするが……

「そんな奴なら、記憶よりも戦い続ける事を選ぶだろう」
「力を求める為に記憶を捨ててるって事?」
「そうかもしれないと言うことだ」

 確かにこの暗い空間に漂う記憶の光は消えていってた。でもなんで? 記憶を消すことに意味なんてあるんだろうか? 経験とかが力になることは多いと思うが……

「あいつは記憶を余計な事だと思ってるんだろう。それに、マナとは純粋な方が宿しやすい。記憶とはマナに取ってはノイズの様なものだ。それを取り払う事でマナを受け入れやすくしてるのかもしれない。そもそもがアラガタは今、ラーゼのマナを無茶して使ってるんだしな。ノイズは少しでも減らした方がいいだろう」
「そういうことね」

 なるほどと思った。記憶がノイズなんて初めて聞いたが、純粋な方がマナを宿しやすいのはなんとなく納得できなくもない。つまりはアラガタは全てを賭けて私たちの星を奪いに来てるというわけだ。星と言うより星のマナを……だろうけど。今のアラガタのサイズで星の内部で暮らすなんて不可能だ。

 私たちの星を襲った後は、また別の星を壊す。そうやって、アラガタは星の破壊者になるんだろう。

「そんなことさせない!」
「ああ、ただ星を壊す……そんなの戦いじゃない。そういうことじゃないだろうアラガタ」

 そんなことを話しながら進む私たちの前に、ひときわ光る場所が見えてきた。きっとあれはマナの光。あそこにきっと何がある。

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