美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω146

いきなり スピードが上がった何が起こったか 分からない だけども予想はできる きっとラーゼ様だ あの方ならできる。こんなことでも―― でもこれは困った事態だ。なぜならスピードが速すぎて 制御が利いてない。

 これじゃあ予定のルートを進めない。それはとても困ったことだ。まさかあの方がそんなことをわからなかったとは思えないが…… でも わからなかったとしてもまあいっか、なにせ可愛いからねあの人は。可愛いは正義を体現してるんだ。だから俺たちからは文句なんて言えない。とりあえずそこら辺はアンサンブルバルン様に任せよう。

 我らの目的は 何が何でもこの星に陣を作り上げる事だ。これができないと何が起こるか……それは俺達の星の終わりだろう。だからこそ失敗することはできない でも このままじゃだめだ 一体どうすれば――

「くそ! このままじゃルートを外れてしまう!!」

 ――そういうのは同じ部隊の一人だ。そいつも必死に飛行ユニットを制御してなんとかルートに回帰させようとしてたけど、暴れ馬のように飛行ユニットは俺等の操作を受け付けない。周りを見るとどんどんとスピードのせいで制御を失ってルートから外れてる仲間たちがみえる。このままじゃ遅かれ早かれ崩壊だ。俺たちが背負ってる赤いマナはそこまで多くはない。ルートを外れてしまうと陣が完成できなくなってしまう。まずい、その思いが俺たちを余計に焦らせる。

(落ち着け……これもきっと必要な事だったんだ。こんな事が出来るのは無限といえるマナを持つラーゼさましかいない。そのラーゼ様が無駄な事をする筈がない! そして俺達が出来ない事を強要するはずもないんだ。あの方は優しい。まさに女神の様な人なんだ)

 俺は慣れない宇宙空間用スーツを必死に操作して打開策を考える。けど俺だけの 頭なんてたかがしれてる。けど周りの仲間たちも必死に飛行ユニットに張り付いてる状況だ。ゆっくりと話し合ってる場合でもない。恥を忍んでもやるしかないか……

「ゼウス、ただいま我らは制御を失ってる。完全手動操作への移行の許可を貰いたい!!」

 俺は胸のあたりにあるボタンを押してゼウスとの交信を試みる。これは試作品だ。色々と突貫で俺達は運用してる。だからこんな通信一つとっても実はちゃんと繋がるかわかってない。それに完全に手動にしたとして……上手くいくか……だが、このままでは皆がルートを大きく外れてしまう。

 完全手動となると、武器を持って戦う事は出来なくなってしまう。だが、今は武器を持つことよりも正確に動かすことが重要なはずだ。こっちの状況は向こうにだって伝わってる筈で、今この状況の優先順位をラーゼさまが見誤る筈がない!

『許可します。完全手動モードへ飛行ユニット移行』

 オペレーターのそんな声とともに、飛行ユニットの前方に棒が現れる。その棒には両手を置く所と、その中央にちょっとした操作パネルがあった。多分ゼウスからの信号で全ての飛行ユニットが同じようになってる筈だ。これで皆がその意図を理解する。

 実際、ルートをオートで辿るのと難易度は格段に上がる。このスーツでは通信も有限だ。極力、オペレーターたちに頼らずに、自分の頭中に叩き込んだルートを辿らないといけない。厳しい……だが、俺達の肩にも世界の命運が乗っかってる。ここで逃げ出す奴なんか、この場にはいないだろう。

 俺はしっかりとハンドルを握った。そして無理矢理ルートに戻すように機体を傾ける。俺達は花形じゃないかもしれない。でも、世界を救いたいと思う気持ちは一緒なんだ!!

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