美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω128

「それじゃあ腕を出してくださいな?」

 そういうのは粘液の中に赤いコアがあるぶよぶよした人型の存在だ。ゼウスに新たに配属されたらしい『アチュプチュタ』という種のこの人? は私の腕を包み込む。何やらは言ってきて、そして吸い出される様な感覚。包まれた腕はひんやりとして、気持ちいい。

「どうですか?」

 どこか舌を巻いたような声。軟体生物だから音を出すと震えるかもしれない。普通に医務室に居なかったら、ただ不気味だけど、流石に色々と今や種族を見てるから受け入れられる。本当にほんの数分、ただ腕をその体に取り込まれただけなのに、今までの疲労が一気に取れたかのようになんかすっきりしてる。

「なんだか……凄いですね」

 私は調子を確かめる様に体を伸ばしたり、回したりする。体が軽いからその場でぴょんぴょんだって出来る。さっきまで肩を貸してもらってたとは思えない軽さだ。

「これが私達の種の特徴なので。特殊なマナがかなり体を侵食してましたよ? 人種なのに無茶をしますね」

 マナ……それってやっぱりあの星のマナが私の体に悪影響を及ぼしてたってことだろうか? いや、そうだろう。悪影響ないと思う方がおかしい。一応慣らしたんだけどね。それは耐性を得たとかじゃなく、やせ我慢が強くなっただけだったんだろう。

「必要……でしたから」

 私はいかにも苦労しました……的に言ってみた。いや、実際苦労したし。

「そうでしょうね。けどまだお疲れ様というには早いのでしょう? カタヤ様達も出てます。任せてもいいのでは? それだけの事をしたと思いますよ」

 なんかこのぶよぶよとした存在に気遣われるのはとても不思議な感じがあるが、本心で気遣ってくれてるんだろう。確かに私も休めるものなら休みたい気持ちはある。けど……ここは頑張りどころだと思う。私はまだ第一機甲師団にきて大きな戦果をあげてない。

 この前のデカ物の進行を阻むのはそれなりに評判良かったが、命令無視が響いたしね。でも今回は怒られる要素なんてない。そして今も星を侵食してるマナの元凶足るあの星に止めをさす……それはまさに英雄じゃないか。そこに私がいないとか……だめ。我慢できない。

 それにこんな優秀なバックアップがいてくれるのならなおさらだ。私はちょっと楽になったらいいな……くらいにおもってた。キララ様クラスの方じゃないと一気に体調を回復させる魔法なんて使えないしね。薬だとイマイチ効きがよくわからない。

 けど、このアチュプチュタ種の力は凄い。魔法でもないのに魔法と同じようで、薬よりもはっきりとわかる。ここまで回復出来たのなら、寧ろいかない理由がない。だから私は一言だけ彼女にいうよ。

「ありがとうございます。けどいかなければいけないんです。なぜなら、私達が人々の希望ですから!」

 私の人生で一度は言いたいセリフの一つを言えた。めっちゃテンション上がって私はゼロの元へとむかう。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く