美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω114

 靄が私を包む。別段ひんやりとかする訳じゃないが、なにが起こるかとひやひやする。けど十秒くらい私を包んだ思ったら、何も起きずに散っていく。

「ええ?」

 なにか起こったのだろうか? 見た感じ何も変わってない様に見える。

「これ……大丈夫?」

 どうにかして今の自分の状態を知りたい所だけど……鏡でもあったかな? いや、そういえばここの壁は結構映り込む感じの壁だった筈だ。それなら……

「ううーん、見えて……ない?」

 鏡じゃないからはっきりとはわからないが、自分が映ってない様な気がする。模様替えの装置の機能を使って自分の体を周囲に溶け込ませてるのだろうか? ならこの装置は持ってった方がいいのだろうか? 小手に移ってるって訳じゃなさそうだしね。靄だってこの装置から出てたし。

「よし!」

 私は板を小脇に抱えて建物の入り口を……目指す訳ない。見えなくなってたとしても出入り口が開閉すれば気づかれるだろう。見えてるのかは知らないけど、多分どっかで視界やらマナなりを感知してる。マナを隠しきれてるのかは分からないが、この星の世界樹であるあれは私のマナは感じ取りづらいみたいな事をラーゼ様は言ってた。ラーゼ様ほど強大なマナの持ち主ならたとえ違う星のマナであっても否応でもわかるだろう

 けど、人種はそもそも生きる為に必要な分くらいのマナしか持ち合わせてない種だ。それは星の支えになってる世界樹にとっては極小のような物。それになんかコーティングされてるみたいな今の私なら……私は建物のちょっとダメージを負って崩れて所から外に出る。今の所大丈夫。まあ建物に近すぎるからちょっと離れるのを待ってるのかも……
 
 心臓の鼓動がヤバイ。私は匍匐前進をしながらタイミングを伺う。まだこの建物の周囲には庭の様に隠れる場所が残ってる。けど、一歩この建物の外に出ると世界樹の根によって平地にされた場所だ。隠れる場所はない。本当にバレなくなってるのか確信が持てない中では賭けに近い。

 けど、いつまでもこの場所に留まってる訳にはいかない。あと一つなんだ。世界樹の根の蠢く音がお腹から伝わってくるし、ふと影が落ちたと思ったら、世界樹の根が真上にあったりとする。

 バレてないのか、それともバレてるけど建物に影響があるから攻撃されないのかわからない。

(行けるの? 行く? 本当に? でも……いや、いけ!」

 真上にあった世界樹の根が引いた瞬間、私はスピードを上げて匍匐前進した。そしてその態勢まま敷地をまたぐ。更に恐る恐る全身を外に出してみる。既に私は丸見えの筈だ。けど、襲われない? 私は匍匐前進の態勢から低姿勢へと態勢を変えてそこから地面を蹴って走り出す。低い姿勢から徐々に体を持ち上げていく。

 その時、すぐ傍の地面を鞣すように世界樹の根が動いた。バレたのか? と思ったが、どうやら違う。ただ動いただけだ。バレてない。私はそれを確認して全力で足を動かした。

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