美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Ω90

「皆さん凄いですね……」

 一階で鎧を探してると、車長さんがそんな事を言ってきた。凄い……とはなんのことだろうか? 今、私は案外自分の弱さに驚いてた所なんだけど?

「どういう事ですか?」

 なので直接的に聞いてみた。

「ユング君はその命を盾にして私達を逃がしてくれました。貴方もラーゼ様もそれを嘆くことなく、動いてらっしゃる。責めてる訳ではないのです。ただ……私にはどうしても受け止めきれなくて、すみません。二人になったら彼の事を思い出してしまったんです」

 悲痛な面持ちの車長さん。確かに彼はここに来て同じ同性という事で気を許し合ってた感じだった。

「確かにユング君は軍属でしたが、それでもまだ……子供でした。私が行くべきだったのでは……と。あそこで彼が貴方に変わったのは理解できるのです。ラーゼ様は女性ですから、同性の貴方が残った方が良いと思ったのでしょう。
 けどあの子はまだ子供でした。だから私が……本当は私は適任だったんです」

 車長さんは良い年してる。もしかしたらユングと同じくらいの……もしくは歳が近い子供でもいるのかもしれない。だからこそユングは……いや、やっぱり軍属だからこそだろう。車長さんは確かにこの中では一番の年長者だが、一般人だ。

 民間人を守るのは軍に所属ものとしては当然の事。けどユングの場合は特例で子供なのに軍に入ってたんだよね。車長さん的には子供を犠牲にして自分たちが助かった事に罪悪感が募ってるんだろう。けど……ちょっと納得できないこともある。

 それはラーゼ様といる時はここまで深刻そうじゃなかったって事だ。おいおい、私はそんなに現実を連れてくる顔してるのかな? まあラーゼ様が傍にいると異性は酔っちゃうのかもしれない。あれだけの美少女だからね。多幸感みたいなのに包まれるというべきか? 

 ちょっと危険な気もするが、それはラーゼ様のせいじゃない。ラーゼ様が美しすぎるせいなのだ。私もラーゼ様の傍に居た時は、不安とかそんなの感じにくくなってたのかもしれない。今はどんどん不安が抑えきれなくなってる気がするしね。

 うう……ラーゼ様が恋しい。早く鎧を見つけて戻らいないと。

(はっ、私もラーゼ様に既に依存してる!)

 なんていう事だ。度を越した美少女というのは麻薬の様な物なのかもしれない。でもイケないことじゃないよね。とりあえず早く鎧だ。っとその前に車長さんには言う事がある。

「私も、そしてラーゼ様も後悔してない訳ありません。誰もが無事にこの難局を乗り越えられればそれがいちばんいい。けど、そんなに甘くはない。私達は、なんとしてもラーゼ様だけでも私達の星に返さないといけないです。だから言っておきます。次は私です。
 そしてその次は……託してもいいですか? 強制なんて出来ません。貴方は軍人ではないのですから」

 次に犠牲になるのは私。それは絶対だ。そうなると最後に残るのは車長さんとラーゼ様。その時、どうするのかは彼次第……私に介入の余地はない。けど、望むのなら……とそうおもっての言葉。それに車長さんは……

「わかってます……ラーゼ様は我々に、あの星に絶対に必要な方です。だからその時は……私も礎になる覚悟をします」

 震える声だった。強制なんてしてない。けど……それしか選択肢なんかないのはズルいとわかってる。でも……言葉にする事で決まる物もあるから……

「ありがとうございます。貴方の決断が人種の未来を照らす筈です」

 それは軍で決まり文句の様にいう言葉だ。私達は人種の未来の為に戦ってる。その言葉を今、彼にも贈ろう。

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